新旧代表インタビュー 【前編:History&Evolution】
2020年11月27日をもって駐妻キャリアnetの代表が交代しました。2017年に創設されてから早3年、多くの会員の方との交流を通じて、駐妻キャリアnetも成長を遂げてきました。世界中に広がる駐妻一人ひとりのキャリア実現に向けて、これまで取り組んできたことを振り返りつつ、今後目指すところについて、新旧代表(旧:金村彩香・新:三浦梓)に語ってもらいました!
【金村彩香profile】
1978年生まれ。邦銀、外銀にてStructured Finance業務経験。2008年夫の駐在帯同で渡米。帰国後出産、外資系証券会社に再就職。再度妊娠の為退職、出産後同業他社に再就職。2015年夫のブラジル赴任に帯同しMBA取得、フリーランサーに。2020年再渡米。
【三浦梓profile】
1981年生まれ。大学院卒業後リクルートにて営業、商品企画、人事を経験。外コンにて採用責任者経験後、人事コンサルタントの傍らスタートアップCOO就任。2020年夫のブラジル赴任に帯同。慶應義塾大学大学院SDM研究科研究員。LinkedIn公式クリエイター。
駐妻キャリアnetがこれまでやってきたこと
金村彩香(以下、彩香)
2017年設立当時は、駐妻がキャリアの話さえしてはいけない?という空気さえ感じる状況があったように感じます。私もひっそりと大学院に通っていた状況でしたが、働きたいという気持ちを少しずつオープンにすると周りにも同じような考えの人が結構いて、なんとかしたいよね!と盛り上がって駐妻キャリアnetができました。駐妻キャリアnet(以下駐キャリ)の活動には3本柱があります。
- 駐妻のキャリアに関するモヤモヤを解決
- 駐妻ライフをキャリアに繋げる
- 帯同時の就労を応援
1.キャリアのモヤモヤを解決する
彩香
まず、1のモヤモヤを解決するために、自分が何者かじっくり考えると思うのですが、その時に自己肯定感アップや自尊心向上に繋がるよう、ポジティブな内容の記事を発信、建設的な考え方を促すイベントを開催してきました。また、客観的視点を取り入れることも大事だと思い、団体内でキャリアカウンセリングを受けられるようにしてきました。
そして自分の経験上、モヤモヤを解決するには、何より、アクションを起こすことが大事だと思って活動してきました。自分がやってみたいと思うこと、なんでも良いと思うんです。私自身、駐在帯同時に通訳・翻訳エージェントの事務所で働いたことで、言葉を訳すというプロセス以上に、一緒に働く人達への関心が高いんだなと気づいたり。アメリカでネイリストの資格を取って起業に向け動き始めた中で、ネイルそのものよりも、人の話を聴くことに自分の意識が向いていると気づいたり。アクションを起こしたことで、モヤモヤは消えていました。そして、自分自身のことをもっと知ることができ、次のステップが見えてきたんです。
2.駐妻ライフをキャリアに繋げる
彩香
アクションの重要性は2本目の柱にも繋がってきます。せっかくの帯同期間を有意義に過ごせるように、駐キャリが、アクションを起こす場、それぞれの人が持っている可能性を経験につなげられる場だといいなと思って活動してきました。駐キャリでブログを書いていた人が広報のキャリアにつながったり、Webサイトをつくりたい人がさらに構築力がある人とスキルシェアできたり、駐キャリのイベントでまだ自信のなかった言語の通訳にチャレンジして自信をつけたり…。嬉しいことにこれまでも駐キャリという場を使って挑戦したいキャリアに挑戦した人は多くいました。これからもこの場がスキルをブラッシュアップできる所になってくれるといいなと思います。あと活動に携わることでビジネスパーソンとしての感度もキープできると思うんですよね。
三浦梓(以下、梓)
彩香さんの実体験にも基づいているからこそ、駐キャリの活動は共感できると感じています。また、アクションすることは「共感してくれる仲間ができ次に繋がる」ということでもあると思います。私も駐妻になって、「家事をやる時間はあるのにやる気が出ない」「自分はそもそも何ができるんだろう」と自分の強みを見失った際に、彩香さん始め駐キャリの運営の方々と話をして自分を取り戻したのを覚えています。そ して皆さんの後押しでブログを始めたことで違うところから記事作成の依頼が舞い込んでくるなど、アクションの大事さを感じるとともに駐キャリの存在のありがたさを感じました。
彩香
なんでもまずは自分ですよね、自分が“Ready”になっているか。自分はどういう人間か?自分はどうしたいか?ブランクがダメかもしれないと自分で思ってしまうとダメになる。
一人で考えていると、なかなか良い答えが出ない時があるので、キャリアサポートのようなヘルプがあると、早く結論にたどり着けるかもしれない。例えば、自己分析して転職ノウハウを知るだけで、そうか!と自分のことも目指す道もわかるのではないかと。人事に強い梓さんが運営に入ってくださって本当に心強くなりましたよね。
梓
ありがとうございます!企業側にも駐妻=ブランクという見方をされることがあるので、駐妻に対する企業、世の中自体の意識を変えていきたいですね。
3.帯同中の就労を応援する
彩香
活動の柱の3本目「帯同中の就労を応援する」では、ブランクのある女性の再就職支援をしている人材紹介会社と提携してFacebookの会員用グループ内で求人掲載などをしてきました。スキルアップというのは、よりチャレンジングな仕事をするためにしていることだと思うので、そのチャンスを掴みやすくしたいと思ったんです。また、現地就労を可能にするために、ビザ・納税など事務的な問題のクリアにも取り組んできました。JETROブラジルと協力して就労ビザに関するイベントも開催しました。配偶者のビザの種類によっても国によっても必要な手続きが異なるので、まずは「正確な情報を得る手段」を知ることが大事だなと思い、JETROを紹介しました。
梓
あと、家庭での調整の仕方ってありますよね。扶養から外れると単身住まいや車なしになるケースもあるとか。
彩香
そうそう。女性活躍の時代に会社の規定によってキャリアが叶わないというのは本当にもったいない話ですよね。でも、働くことができない間、次のキャリアへのステップになるかもしれないと考えて最近注目されてきているプロボノに取り組む方も増えてきたように思います。私たちの活動もある意味プロボノ活動ですが、ゼロから作りだすチャレンジが多くでき、与えられた仕事よりも、正解のない中でものすごく考えて自ら動こうとするので、様々な力がつくのではないかと思います。
梓
決められた仕事をこなすだけではない、当事者意識が啓発されますよね。おっしゃるように活動実績を示せることができればアピール材料として企業に認められるケースも増えてきています。
どんな変化が起きているか?
梓
これまで様々な活動について話してきましたが、駐キャリを始めた当初と比べて、どんな変化を感じていますか?
彩香
まずキャリアについて話す駐妻が多くなってきた印象です。関連記事も増えてきて普通に「働きたい」と言える環境になってきたんだなと感じています。リモートワークの案件も増え、駐妻のキャリアを支援する企業・コーチも増えてきました。パラレルキャリアの考え方も浸透してきて、プロボノの機会も増えてきて、ビザ等の問題でどうしても働けない場合の選択肢も増えてきましたよね。大学院や語学習得などのスキルアップも良いと思うのですが、アウトプットの経験があると尚良いのかなと。その辺、企業はどう見ているのでしょうか。
梓
ゴールに向けたストーリーと成果をきちんと話せられれば、就労以外の活動も職歴として認めるケースは増えてきています。最近サポートをした方でブランク期間にボランティアで関わった語学学校の運営を改善した実績により10年のブランクを経て再就職を果たした方がいらっしゃいました。
しかしまだまだ企業側に啓蒙していくことが必要で、完全に認められるにはあと2〜3年はかかるように感じています。
彩香
まだ少し時間がかかりそうですね。 Gender Gap Reportによると2020年日本は121位。前年の110位からさらに下がっているんですよね。世界幸福度ランキングの順位も低くなってきているし。働く女性が増えてもワークライフバランスを保って働けるようになるにはまだ改善の余地があると感じています。女性のマインドが壁と言われることもありますが、女性、男性ともに、ジェンダーロールという固定概念を持ってしまっているのも障害になっているのかもしれないですね。
梓
昨年ウィメンズキャリアメンターという資格を取得したのですが、メンタリングをした際に、そもそも目指す女性のロールモデルが自分の職場にはいないことに不安だと聞いたことがあります。いないのであれば、自分が目指す女性のロールモデルを作っていくのでもいいとアドバイスし、一緒に目指す姿を見つけるサポートをしています。
彩香
性別に関係なく、コラボ型とか引率型とか様々なリーダーシップスタイルがあるとも思いますし、一人ひとりにあったビジネスパーソン像を描けるといいですよね。
<後編に続く>
(企画・インタビュー・編集:坂本智子、校正:秋元かおる)