INTERVIEW

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プロフィール:NPO法人国際子ども権利センター(シーライツ)代表理事。文京学院大学教員。卒業後、日本ユニセフ協会勤務。イギリス大学院修了後、ブータン、インドに滞在し、貧困少女たちにかかわる。1996年にシーライツに入職。国内外で子どもの権利普及活動に携わる。2004年からカンボジアで児童労働・人身売買防止事業に従事し、2010年に帰国。

世界の子どもたちが生きやすい社会を実現するために

子供の権利獲得にまい進されてきた甲斐田万智子さん。甲斐田さんの課題解決に対する熱意が伝わったインタビューになりました。

開発教育との出会い 

大学時代の国際協力ボランティアでの経験から開発教育に従事したいと思い、大学4年の7月から日本ユニセフ協会で働き始めました。日本の子どもたちに開発途上国の問題と私たちの生活との関係について伝えたり、大学時代の恩師とともに日本の政府開発援助に対するアジアの人たちの声を岩波新書にまとめたりする活動も行っていました。その後イギリスの開発教育センターについて学びたいと思っていた頃、夫もイギリスに留学を希望していたため、27歳の時に2人で2年間イギリスの大学院に留学しました。学生時代から募金活動時に貧しい子どもの写真やビデオを見せることに違和感を感じていました。開発教育の考えに「同じ人間として共感する気持ちを育む」というものがありますが、有名人やメディアが飢餓に苦しむ人を援助しようというキャンペーン(Live Aidなど)のもとに募金活動大々的に行うことにより、一般市民の間で、アフリカの人に対して「援助を待っている人」という偏見が生まれます。イギリスでは、そうした弊害に対して、開発教育業界の人たちが開発教育を通してどのような対策をとっているかについて学びました。卒業後は子どもの声を紹介したBroken Promiseという本の翻訳出版『未来を奪われた子どもたち』や執筆活動を行い、日本で出産した後にブータンへ帯同しました。

発展途上国で感じたリアル

大学生のときに国際協力に関心を持って以来、途上国に住みたいと思っていたので、ブータンへの帯同が決まったときは嬉しかったです。以前、フィリピンのスラム街にホームステイをしたり、夫とインドを回った経験があり、現地での生活はある程度想像できていました。当時のブータンは鎖国状態で海外製品が手に入らず、現地の人と近い生活をしていました。また近所に住む女性が出産時に出血多量で亡くなり、世界では出産で命を落とす女性が多くいるということを現地で目の当たりにしました。その後はインドに帯同しました。

インドにはSEWAという貧困女性の労働組合があり、女性の人権獲得に向けた活動をしています。インドでは男児偏重の歴史的な慣習により、女児を身籠った場合の中絶や女児の新生児殺しが多く発生し、男女人口比が歪んでいます。SEWAだけでなく多くの女性たちが進めていた人権運動について学ぶことができたのは良い経験でした。最も学んだことは、子ども参加という価値観と実践、つまり子どもが意見表明権を行使し、グループをつくったり、集会を開いたりする中で、働く子どもたちが自分たちの問題を解決することを大切にするNGOに出会うことができたことでした。その後、仕事復帰のため、子どもを連れて帰国し、国際子ども権利センターに入職しました。同団体では児童労働、子どもの性的搾取、人身売買などの防止事業に取り組んできました。横浜で行われた子どもの性的搾取に反対する世界会議でワークショップの開催や海外からのゲストを横浜の黄金町の性産業の実態を考えてもらう視察プログラムも実施しました。その会議でカンボジアで日本も子どもの性的搾取の加害者側であることを痛感し、カンボジアに帯同することにしました。

カンボジア帯同時は、同団体の駐在員としてカンボジアの児童労働、子どもの性的搾取、人身売買防止活動に従事しました。市町村、警察、地元の方と協力して子どもたちを守るための仕組み作りやネットワークの構築を行いました。現地の学校や家を回り、出稼ぎに連れていくと見せかけて子どもの人身売買が行われるケースがあることを伝えたり、親への収入支援活動も行っていました。特に人身売買が多く発生する地方では知識がない人も多く、情報を正しく伝える必要があります。ある地域では子どもに物乞いに行かせることは当たり前という慣習があり、その価値観を変えるのは非常に大変でした。その後のタイ帯同中もカンボジアに2-3カ月に一度通い、事業を継続しました。子育てと両立できているつもりでしたが、実は子どもたちに非常に寂しい思いをさせていたことを後で知り、時間はいくらあっても足りないと感じました。当時は仕事の比重が大きすぎたので、もっと子どもたちと過ごせればよかったと反省しています。

子どもの権利のために二足の草鞋を履く

現在は、認定NPO法人国際子ども権利センター(シーライツ)の代表理事と大学教授という2つの仕事を掛け持ちしているので非常に忙しいです。

こども基本法とこども家庭庁の設置をはたらきかけるなど、「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」の共同代表もしています。日本社会にもブラック校則、体罰、教育虐待、児童虐待、子どもへの性暴力などさまざまな問題があります。日本の子どもは自己肯定感や幸福度が非常に低く、他国よりも子どもが孤立化し自殺者数も多いです。また性的マイノリティや外国ルーツの子どもたちへの差別も多く、権利保障が遅れています。

まだまだやることはたくさんありますし、国際子ども権利センターの子どもの権利普及の活動をもっと広げていきたいです。今年の3月に『世界の子ども権利かるた』(合同出版)を制作して高評価をいただきました。子どもたちが孤立せず、誰かに相談できる環境作りに取り組み、将来的には子どもの声を聞き、子どもの権利に基づいて問題を解決できる社会にしたいと思います。私は何らかの形で死ぬまで活動していると思うので、ボランティアへの参加など、興味のある人はお声をかけてください。

学生ライター感想:

甲斐田さんの子どもへの愛情が深く伝わり、私自身今回のインタビューからたくさんのことを学ばせていただきました。子どもが抱える課題は将来に大きく影響するので、気軽に誰かに相談できるような環境づくりに私も貢献していきたいです。

取材・執筆:津田京香

 津田塾大学 総合政策学部/3年

校正:長崎(金田)亜弥香(駐妻キャリアnet)

文責:駐妻キャリアnet

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