INTERVIEW

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プロフィール:短大を卒業後、日系電子部品メーカーに就職。営業事務、営業、生産計画など、転勤・出向を含めさまざまな職務を経験。2017年〜2021年夫のドイツ赴任に伴い、帯同休職を取得。2021年5月より復職しフルタイムで勤務中。

モヤモヤから生まれる行動力 元ドイツ駐妻のアイデンティティロス克服術

帯同生活がどこか満たされない、モヤモヤするーー。そんなとき、仕事で認められることが自分のアイデンティティーだったと気付き、愕然としたという中村さん。「キャリアについて話したい」という自分の要望に応えるための思い切った行動が、日本で会社員を続けていたら得られなかった「財産」になったとお話して下さいました。中村さんのキャリアに迫ります。

「女性の仕事」だった事務職からの職務転換 変化を楽しみ、成長を感じるように 

ー初めに、ファーストキャリアのお話から伺ってもよろしいですか?

はい。私が学生だった1996年頃は、働く女性のモデルが現在とは全く違っていました。周りの女性の多くは、「結婚したら仕事を辞める、子どもができたら辞める、配偶者の転勤が決まれば辞める」というキャリア観を持っていました。そんな中、私も進路について考え始めました。当時、女性は手に職をつけることが主流でしたが、それでは働く場所が限られてしまうのではないかと考え、事務職として日系電子部品メーカーに勤める道を選びました。しかし、与えられた仕事を淡々とこなす日々が続き、次第に他のキャリアの可能性を考えるようになりました。そのとき、転機が訪れました。上司からの誘いがきっかけで、新たな仕事に挑戦したいしたいという気持ちが強くなり、営業職への職務転換を決意しました。

ー職務転換後、どのような変化があったのでしょうか?

単に仕事内容が多様化しただけでなく、業務を通じて人との出会いが増え、それに伴い視野も格段に広がりました。変化を経験できることが楽しかったですし、自分自身の成長に繋がっているとも感じていました。その後も、結婚や転勤を経験しつつ、10年ほど営業の仕事を続けていました。 

「喉から手が出るほど欲しかった」から行動できた 「キャリアカフェ・ドイツ部」開催でモヤモヤ解消

ー順調にキャリアを積まれていた中、どのようなお気持ちでドイツに帯同されたのでしょうか?

実は、夫の駐在が決定した直後に妊娠が発覚しました。以前から海外で生活してみたいと考えていましたし、心のどこかで仕事から離れたいとも思っていました。そのため、海外で子育てに集中できる環境はむしろラッキーだと感じ、何の不安もないまま、休職制度を利用し帯同しました。

渡航直後は子育てに精一杯で余裕がありませんでしたが、1年ほどが経ちドイツの生活に慣れてきた頃、どこか満たされないような、モヤモヤした気持ちを抱き始めました。その時初めて、「会社で仕事をして認められること」が自分のアイデンティティーだったのだと気付き、愕然としたのです。せめてキャリアについて話せる場が欲しいと強く思うようになり、友人の後押しで「キャリアカフェ・ドイツ部」の開催に踏み切りました。

ー「キャリアカフェ・ドイツ部」ではどのような活動をされていたのですか?

3、4カ月に一度、オンライン上でドイツ在住の駐妻が集まり、情報交換やモヤモヤを共有していました。多くの駐妻は自分の仕事を手放して帯同するので、バリバリと働き続けているパートナーに対してストレスを感じている場合もあります。そうした胸の内を話すことで思考が整理され、モヤモヤが解消されていきました。また、メンバーの経験を参考に、「私もやってみよう」と行動に移せるようにもなりました。次第にメンバーが生き生きとし始め、開催当初は想像もしていなかったような成果を感じることができました。この人脈と行動力は、ドイツに帯同したからこそ得られた財産です。

仕事のやりがいは追求、でも何も犠牲にしない「エコキャリ」

ー本帰国され、現在はどのようなキャリアを歩まれているのでしょうか?

以前勤めていた会社でサプライチェーンマネジメントに関わる仕事(※1)を担当しています。帯同前と比べ、今は仕事が第一優先のバリキャリではなく、子育てとの両立をはかる「持続可能なエコキャリ」を大切にしています。

※1:サプライチェーンマネジメントとは、商品やサービスの生産フロー全体を管理することで、品質、配送、顧客体験、収益性を最大化することを指す。

ー今後のキャリアビジョンについてはいかがですか?

人種やバックグラウンドがさまざまなドイツで、多様性を肌で感じ、その重要性を意識するようになりました。そのため、今の業務の専門性を高めつつ、社内のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をけん引する活動に携わり、特に働く女性をサポートしていきたいと考えています。会社の変化が社会の変化につながることを期待しています。

ー駐妻の方に向けてメッセージをお願いします。

帯同は、仕事のブランクにはなってしまうかもしれませんが、仕事以外のさまざまなことを吸収するチャンスでもあります。もがき、悩むことも含めてです。そのため、自分の経験を糧にし、強みに変えていくことが大切だと思います。

学生ライター感想:

中村さんが体感されてきた、女性のキャリア像や働き方の変化が印象的でした。変化する時代で働く将来に向け、何ができるのか、何をしていくべきなのか、私も学生として考えていきたいと感じました。

取材・執筆:笠原菜々子

 津田塾大学英語英文学科 4年

校正・文責:三浦梓

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