日本で頑張った経験が帯同先・帰国後のキャリアに繋がる
プロフィール:東京大学(経済学部)を2009年に卒業後、アクセンチュアに入社。ドリームインキュベータに転職し新規事業コンサル、ベンチャー支援、ビジネスDD等に従事。2018年、妻の駐在を機に渡米。ISID(電通国際情報サービス)を経て、現在はアクセンチュアにて米国プロジェクトに従事。現職の傍ら、2020年よりニューヨーク大学のMBAプログラムに参加。
日本で頑張った経験が帯同先・帰国後のキャリアに繋がる
今回は、駐夫Kawakamiさんにインタビューを行いました。大学卒業後コンサルティング業界でキャリアを歩みましたが、配偶者の駐在を機にアメリカに帯同。駐在中はMBA取得や現地就労に取り組んだそうです。
それまでの努力と業界の特殊性が迷いなき帯同に繋がる
ーはじめに、帯同前のキャリアを教えてください。
大学卒業後、アクセンチュア株式会社に戦略コンサルタントとして入社しました。約4年後、ドリームインキュベータというコンサルティング・ベンチャー投資などを行っているファームに転職し6年弱働きました。
ー転職にはどのような理由があったんですか?
第1に、幅広い業界に関わりたいと思ったからです。アクセンチュアでは、基本的にひとつの業界の専門性を高めていきます。私は金融業界を中心に経験を積んでいましたが、次第にもっとさまざまな業界をみてみたいと思うようになりました。第2に、自分が所属する組織の経営に関わりたいと思ったからです。学生団体のときにAISECという団体でチームリーダーをした経験から、経営や戦略に関心を持っていました。しかし、アクセンチュアは当時から超巨大企業だったので、自分が直接所属する会社の経営に関わることはあまりありませんでした。逆に、転職先のドリームインキュベータはさまざまな業界の案件を1人のコンサルタントに担当させる文化があり、かつ小規模な組織だったため社員が経営の議論に参加する機会がありました。これら2つの条件を満たしていたので魅力を感じ、転職しました。
ーその後どのような経緯で帯同を決めたのですか?
転職直後に結婚し、結婚後5年ほどして妻のニューヨーク駐在が決まりました。結婚時から妻には駐在の可能性があることがわかっていました。その頃、私はちょうどドリームインキュベータでマネジャーに昇格した時期で、いつか妻に駐在の辞令が出たら駐在に同行する心構えはできていました。コンサルティング業界ではマネジャーになることは1つの区切りですし、プロジェクトがひと段落したタイミングで長期休暇をとったり、別のキャリアを模索する文化もあったので、帯同も1つの選択肢として捉えることができました。
さらに、そこまで積み上げてきた経験や人脈を基に、日本に帰ってきてもなんとか仕事がみつかるだろうという感覚もありました。これらの判断を基に、妻のキャリアを尊重しつつ家族で一緒に米国で暮らす道を選ぶことにしました。
帯同中も価値を出すために全力で
ー帯同中は何をされていましたか?
現地での就労と勉強です。まず、現地就労については帯同前から決めていたので、帯同2カ月前にはISIDから内定をいただいていました。しかし、ビザの関係で帯同直後からは働けなかったので、その間プロダクトスクールというプロダクトマネジメントの手法を学ぶ現地の学校に通ったり、自身でアプリサービスを立ち上げたりしていました。もともとサービスを作ることに関心があったのと、ISIDでやる予定だった仕事とも関連性があったからです。帯同開始から半年後には就労許可がおりたので、ISIDで働き始めました。その後、アクセンチュアに転職し、ニューヨークの案件に従事する傍ら、MBA取得のため大学院にも通いました。
ーアメリカの企業で働くことについて、特に苦労したのはどのような点ですか?
1点目は、組織のなかで役割を見いだし価値を提供していくことです。ISIDでは、プロジェクトに途中から入ったのでプロジェクトメンバーとの関係構築が必要でしたし、比較的大きなプロジェクトだったので組織のなかで自分はどのようなことをすべきか、それによって組織にどのように貢献できるのか悩みました。これは日米問わず課題になる点ではありますが、特にアメリカでは即戦力になることが求められるので、より厳しいチャレンジだったと思います。2点目として、言語の壁もありました。英語はあらかじめ勉強しましたし、英語での日常会話にはストレスを感じないのですが、仕事となると100%伝わらないと前に進まない局面があり、その数%をどう埋めるか苦労しました。
日本で部分的に英語を使う業務とは、求められる英のレベルが天と地ほどの差があり、やはり語学力は大事だとしみじみ感じました。自身でビジネス単語帳を作ったり、アプリを活用してスキマ時間に毎日英語の勉強をしていました。
ー現在は働きながらMBA取得も目指しているとのことですが、どのようなスケジュールで日々過ごしているのですか?
平日は早朝から夜遅くまで仕事、そこから大学院の宿題をします。そして、土曜日は授業が9時から4時、そこから家事や妻との時間、日曜日に宿題、という生活です。とても忙しい日々ですが、勉強自体によりリフレッシュできていますし、オンラインの授業も活用して妻とアメリカ中を旅行したことで非常に楽しく過ごせました。
男女の違いが、個々が望むキャリアの妨げにならない社会へ
ー今後のキャリアについて教えてください。
数週間前に帰国し、現在はリモートでアメリカのプロジェクトに携わっています。このプロジェクトに区切りがつき、MBAの取得が完了したら、日本に拠点を移す予定です。その後の具体的な仕事についてはまだ模索中ですが、米国での経験を基に何を成し遂げたいかを腰を据えて考え、決めていきたいです。
ー最後に読者の方にメッセージをお願いします。
男性が帯同するイメージを持つ方はあまり多くないと思います。しかし、私は今後駐妻と同じくらい駐夫が増えてほしいと思っています。そうすることで、駐夫にとっても海外でのキャリアを広げるチャンスですし、夫が制約になることなく海外駐在をしたい女性が望むキャリアを歩める可能性がより高くなるからです。
学生ライター感想:
駐夫さんのお話を聞くことは初めてで非常に新鮮でした。改めて「駐妻」という言葉がどうしてあるのか考えさせられましたし、日本の企業にはまだ男性中心的な傾向があることを感じずにはいられませんでした。
取材・執筆:渡辺璃香
慶應義塾大学大学院 修士2年
校正:中山斉奈
文責:三浦梓