INTERVIEW

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プロフィール:大学卒業後、伊藤忠商事に入社。結婚後、南アフリカ、イギリス約6年ずつ帯同、現在アメリカ駐在約3年目。日本を含む4カ国の在住経験から海外おとな女子サロンを主宰。アートコンサルタントとして画廊のサイトやイベント講座も主宰。一中節(浄瑠璃)宗家とのオンライン座談会のファシリテーターも務め、日本文化を紹介。

キャリアとの間で葛藤 3度目の帯同で納得した自分の道

父親にはビジネス、子どもには国際性、母親には何が残るのだろうか。3度にわたる帯同中、駐妻という立場に疑問を抱かれたそうです。20年にわたり日本と外国を行き来するKellyさんにお話を伺いました。

商社ビジネスで感じた仕事のやりがい

ー初めに、ファーストキャリアについて教えていただけますか

大学卒業後、商社に就職しました。当時は湾岸戦争やベルリンの壁の崩壊など、世界が目まぐるしく動いていました。大学の国際政治ゼミでの活動を通じて、国際社会について知るうちに、「世界をこの目で見てみたい」と思い入社を決めました。

ー商社では、どのように「世界」と関わっていたのでしょうか?

製紙原料であるパルプの輸入部署に配属され、アメリカやヨーロッパなど、多くの地域と取引をしていました。世界のサプライヤーと日本企業の仲介役として、どのように付加価値を付けてビジネスをするか、また各国の海外店とチームでどう動くかを間近に見られて大変刺激的な会社生活でした。

3度の帯同 「駐妻のキャリア」と格闘

ーその後、配偶者の駐在で南アフリカ、イギリスに帯同されたそうですが、どのようにキャリアを継続されてこられたのでしょうか?

企業でキャリアを積むことは難しかったです。まず、南アフリカへの帯同と同時に、8年ほど勤めた商社を退職しました。再就職に向け、帯同先では大学に通うつもりでしたが、治安が悪く、通学が困難だったため、諦めました。近所の料理学校に通い、子どもが生まれてからはベビーマッサージの資格を取得するなど、できることを探して取り組んでいました。

南アフリカではベビーシッターを頼みながら女性が働くことは当たり前だったので、帰国後は私も再就職するつもりでした。しかし上の子が幼い上に第二子妊娠中の状態で働くことへ周りの協力が得られず、就職を断念しました。出産後は児童英語やベビーマッサージの講師をしながら2年半ほど過ごした後、イギリスに帯同しました。イギリスでは子育てを優先した生活を送りました。現地ママ友たちとの交流を通じて、ロンドン社会に入り込めたことがとても楽しかったです。

帰国時には子どもが小学生になっており、今回が就職できる最後のチャンスだと考えました。しかし14年間のブランクがあり、「企業で働く」際に必要なスキルのアップデートができていないことに気付きました。

ーどのように、企業での仕事に復帰していかれたのでしょうか?

まずは週に数日、オンラインでの秘書業務から始め、徐々に仕事を増やし、最終的にはほぼフルタイムでマーケティング会社の事務担当となりました。その後、資生堂での派遣勤務を経て、正規雇用を目標に外資系製薬会社で働き始めました。途中で会社が買収されることになりましたが、商社時代のコミュニケーションスキルを生かしながら新旧の社員と仕事を進め、やりがいを感じていました。その頃、夫のアメリカ駐在が決まり、当時は仕事に集中していた時期だったので、自分だけが日本に残ることも考えました。しかし子どもと一緒に過ごせる最後の期間となることや周囲から母親が日本に残ることへの賛成が得られなかったため、帯同を決意しました。

企業に固執しない「駐妻なりのキャリア」を

ー現在のアメリカ生活について教えていただけますか?

今はオークションの資格を取得し、オンライン画廊の運営を手伝っています。そのご縁で浄瑠璃(一中節)をオンラインで習い始め、日本文化を楽しみ、海外や次世代に伝えられる活動をしています。また同じような立場の女性向けに自分の経験を伝え、情報交換をする場を設けたいと考え、オンラインサロンを立ち上げました。日本からの参加者も交え、大人の自習時間や洋書をみんなで読む時間を設けるなど、幅広く活動しています。私が初めて駐妻になった頃は、妻としての務めが最優先という風潮がありました。しかし今はそれぞれが自分らしい生活を海外でもすべきだと思います。まず私が体現したいと考え、カフェでアルバイトも始めました。

ー最後に、今後のキャリアプランをお伺いしたいです。

オンラインサロンをオフラインにするという夢があります。子どもも含め、誰もが気軽に立ち寄れるような交流の場を東京に作りたいと考えています。今は画廊のサポートをしているので、アートを交え日本文化も楽しめる機会を提供したいです。海外でアートショウと日本文化の体験ができるイベントを合わせた、日本料理のカクテルパーティを開催するのが夢です。また、海外に自分のこと、日本のことをしっかり英語で伝えられるような教養が得られる場も作りたいと思っています。渡航前の方や学生さんにぜひ参加していただきたいです。企業に戻って働くことにこだわらず、別の形でキャリアを歩んでいければいいと思えるようになりました。過去の私のような女性を作らないために。

ー駐妻の皆さんにメッセージをお願いします。

私は帯同経験の中で、周囲の意見を気にして、自分の気持ちを後回しにしてきたことを後悔しています。周りと違う道を歩むことには抵抗があるかもしれません。私なんて…という気持ちになることもあるでしょう。でもぜひ自分のやりたいことに挑戦してみてほしいです。誰もがチャレンジし、失敗する権利を持っているのですから。

学生ライター感想:

Kellyさんが、キャリアと帯同の間で葛藤されてきたことが伝わってきました。ご自身の経験やそこから得た教訓を次世代に伝えていきたいという熱い思いがとてもすてきでした。

取材・執筆:笠原菜々子

 津田塾大学英語英文学科 4年 

校正:室田美鈴

文責:三浦梓

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