新たなカタチで社会に貢献「国際協力にITを活かす」
プロフィール:大学卒業後、IT企業に就職。その後、フリーランスとしてスキルアップを目指し、2007-2009年にJICAボランティア・PCインストラクターとしてコロンビアで活動。帰国後、国際協力の仕事に就くも、出産を機に退職。産後、デザイン会社のIT/WEB担当者として再就職。夫の海外赴任に伴い同社を退職し再びフリーランスへ。2男1女の母。
新たなカタチで社会に貢献「国際協力にITを活かす」
現在ブラジルに駐在帯同中の秋元かおるさん。幼い頃から国際協力に興味があった秋元さんは、ITスキルを活かした青年海外協力隊の経験をお持ちです。現在もそのスキルを磨きつつ、多方面で活動されている秋元さんの「これまで」と「これから」に迫りました。
青年海外協力隊での経験・ITとの出会い
―秋元さん、本日はよろしくお願い致します。早速ですが、インタビューに移らせていただきます!ご経歴を確認させていただきましたが、(独)国際協力機構(以下、JICAという。)でボランティアや企画部でのお仕事を経験されたのですね?
はい、そうです。幼い頃から国際協力に興味がありました。アフリカの貧困に関する映像を見たことがあり、自分を含め不自由なく暮らしている人々と、そうではない人々が世界には大勢いるという現実に、社会の不条理を感じていました。そこで、いつか青年海外協力隊に参加したいと思うようになりました。大学卒業後はIT業界の会社や、ブライダル業界でIT担当者として働いたのですが、やはり国際協力に携わりたいと思い、青年海外協力隊に参加することにしました。
ー2007~2009年にかけて、コロンビアで活動されたということですが、実際にはどのような活動をされたのでしょうか?
私が配属されたのは地域の貧困者層向けの非政府組織(NGO)でした。具体的な活動は、近隣の公立小中学校に通っている子どもたちへお昼ご飯を提供するプログラムの利用者データベースを改変したり、大人向けの職業訓練校や小中学校のパソコンの先生たちにインターネットを使った授業(ブログ作成など)を一緒に考えたり、DB作成ソフトの使い方を教え、生徒管理DBを一緒に開発したりNGOのWEBサイトをインターン学生と一緒に構築したりと、さまざまでした。
―IT業界でお仕事されたご経験が、当時の活動で生かされていますね。
学生時代、「国際協力をしたいならば技術がある方が役に立つのではないか。これからの時代はIT技術を身に付けておくのが良いと思う。」とアドバイスをいただいたことがあります。そのアドバイスを受けた影響でIT業界に就職したのですが、後々このような形で役に立てていると思うと、よかったなと思います。
―青年海外協力隊を終えた後、JICAの企画部で働かれたということですが、やはり国際協力への思いが強かったのでしょうか?
そうですね。2年間実際に活動をしてみて、自分にできたことは限られていたため、より広く国際協力に従事したいと思いJICAで働くことに決めました。
駐在帯同とキャリア
―2015年に配偶者のブラジル赴任に同行したとのことですが、その際に悩んだり、戸惑ったりしたことはありますか?
当時働いていたデザイン会社を退職しなければいけなかったことですね。出産のタイミングでJICAでの仕事を辞めたのですが、初めての専業主婦という立場・初めての育児に慣れず、軽い産後うつになってしまいました。
状況を変えなければと思ってフリーランスでWEBに関するお仕事を少しずつ始めていた際、声をかけていただいたのがそのデザイン会社でした。育児と仕事の両立ができたことや、2人目出産後にリモートワークを取り入れ働きやすい形で復職できたのも、そこで働いていた方々の理解があってこそでした。そのようにお世話になっていた会社を辞めなければならなくなったため、申し訳ない気持ちと、また働けなくなってしまうことに対する不安がありました
―キャリアの中断は、駐妻の多くの方々が悩むポイントですね。現在は、ブラジルで何かお仕事はされているのでしょうか?
退職したデザイン会社と連絡を取り合っていたため、今はリモートでできるWEB制作などのお仕事をしています。それ以外にも、現地起業家のITサポートや、日本のNPO・サービスグラントのWEBマーケティングのプロボノに取り組みつつ、ITスキルの維持に努めています。
―仕事の他にもさまざまなことに取り組んでいらっしゃるのですね!
また、コロナ禍になって以来「自分が本当にやりたいことは何か」に向き合い、私にとっては国際協力かな、と思い至りました。以前から興味を持っていた、ITを国際協力に活用しようという想いを持った人が集まるコミュニティ『ICT for Development Lab』に参加したり、オンライン上でスキルアップ講座を開講して、受講費をブラジルにあるスラム街の支援につなげる活動をしています。
国際協力とITで描く未来
―現在も多方面でご活躍されている秋元さんですが、これからしたいこと、目指していることなどありますか?
夫がまた別の国へ転勤する可能性があるため、オンラインで自分の仕事を続けたいと思っています。コロナ禍になって以来、リモートワークが世の中に定着しつつあるため、今後もリモートで仕事を続けられることを確信しています。
また、これまでの経験から、人に何かを教える・伝えることが私に向いていることの1つだと思っています。そのため、WEB開発等に携わりつつ、オンラインコースの講師ができればと思っているところです。課題としては、今の自分の仕事と国際協力をどう繋げていくかですね。どう結びつけて活動していくかを模索中です。今できることを積み重ね、携われればと考えています。
学生ライター感想:
スキルをただ持っているのではなく、それをいかにして国際協力に活かせるかを模索し続ける秋元さんの姿に非常に感動しました。私も『活かす』ところに焦点を当てて、生きた知識やスキルを身につけていきたいと思います。
取材・文:中村陽
津田塾大学 学芸学部 英語英文学科3年
校正:山口友梨子