悔しさをバネに、諦めずに前を見つめて
プロフィール:法科大学院卒業後、日系大手の法律事務所に就職。その後、米系金融機関に転職したものの、夫のシンガポール駐在を機に退職。キャリアップを目指し、単身で米国ロースクールに留学し、卒業後再びシンガポールに戻り、現在仏系の会社でリーガルカウンセルとして、育児と仕事との両立に奮闘中。
悔しさをバネに、諦めずに前を見つめて
シンガポールへ帯同中で、現在リーガルカウンセルとしてご活躍中の高畑侑子さんにお話を伺いました。今回は特にシンガポール帯同中について詳しくお聞きしました。
がむしゃらに働いたキャリア初期
―海外転勤に同行する前のキャリアやライフプランについて教えていただけますか?
法科大学院卒業後、日系大手法律事務所に所属しました。就活の軸はクロスボーダー案件など国際関係の仕事をやること。当時はがむしゃらに働くことを意識していました。3,4年で業界にスキルや業界理解が深まるとは思っていませんでしたが、高いパフォーマンスをあげるにはしっかりと働く必要があると思ったからです。仕事の効率化を考えつつ、サボらず、常に一生懸命、自分に負荷をかけて働きました。その結果、会社でも評価され、やりがいを感じていました。
ー仕事に大きなやりがいを感じていた時に帯同することが決定しました。葛藤はありましたか?
このままキャリアアップができるだろうと考えていた矢先、夫の海外転勤が決定しました。帯同するためには仕事を退職する必要があったため、決断をすぐに出せませんでした。会社にシンガポールに転籍して働けないかと交渉しましたが認められず、夫が先にシンガポールに行っている間の半年間、悩み続け、さまざまな人に相談しました。
その結果、海外で働く経験は貴重であることに加え、アメリカ系の会社に在籍しているものの、私自身海外経験がなかったため、帯同をすることで語学力や海外の習慣を学べると思い、帯同を決意しました。
シンガポールで突きつけられた「負け組」という言葉と成長
―次に、海外帯同中の活動について教えていただけますか?
シンガポール渡航前に相談した際、「シンガポールは地域統括会社が多いから心配しなくて大丈夫」と言われていたため、現地就職に不安はありませんでした。しかし、現実は日本人に対して開かれているポジションが少なく仕事探しは困難でした。
紆余曲折の後、日系銀行の現地採用枠で就職しましたが、思っていたキャリアプランを描けませんでした。その理由は、日本企業本社から派遣される駐在員と現地採用の給料や仕事の裁量の差が大きい特殊なシステムにあります。加えて、法律に関係ないコンプライアンスの仕事だったため、全くやりがいを感じられませんでした。
ーキャリア形成のために取り組まれたことはありますか?
とにかく必死にキャリアアップについて考え、アメリカのロースクールLLMへ単身留学を選択し、NY州弁護士登録をしました。留学を決めた理由は、シンガポールの日本人コミュニティで突きつけられたひとこと「現地採用で働いているなんて、君は負け組だね」という言葉でした。
ーその後、現在、フランス系の会社のリーガル職で出産も経て勤務をされていますが、仕事上の苦労はありますか?出産も経て勤務をされていますが、仕事上の苦労はありますか?
実は、入社後すぐに妊娠が判明しました。日本の会社では入社後すぐの妊娠に良い顔はされないかもしれないのですが、フランス系の今の会社では皆喜んでくれました。その理由は、おそらく産休期間が短く、あまり空けずに戻ってくる前提だからだと思います。(16週間の産休期間)
ー育児と仕事の両立において苦労されている点はありますか?
育児は現在8ヵ月の息子の夜泣きに苦労しています。仕事はフランスに本社があり、上司がミュンヘンにいるなどヨーロッパとのやりとりが多く、時差に悩まされています。仕事の忙しい時間が子供のお迎えのある夕方に集中してしまうため、夫と助け合いながら仕事をしています。
バランス重視のキャリア中期とキャリアアップの手伝い
―最後に、今後のキャリアやライフプランについて教えていただけますか?
今の会社で継続して働き、、育児などのプライベートとのバランスを保ち、長く働きたいと思っています。また現在、案件ごとに関連する法令を本やニュースに触れて勉強しています。
子供が生まれてからのキャリアではいろいろな人と働き、経験を生かしながらバランス重視で働きたいと思っています。子供が生まれるまでに考えていたキャリアプランでは、最終的には企業法務のトップになりたいと思っていましたが、子供が生まれたことで考え方が変わり、必ずしもトップに上り詰めることだけがすべてではないと考えています。
仕事以外では、他の人のキャリアをサポートする活動をしたいです。その理由は、シンガポールに来た時にキャリアについてとても苦しんだからです。人の悩みはさまざまで、例えば日本は産休が長いことで悩む人がたくさんいると思います。そういう人たちのキャリアアップやブランク期間を活かせるような資格を勉強することや、企業とのコネクションを作るといった活動を通して、キャリアアップしたい人たちの手伝いをしたいと思っています。
学生ライター感想:
バリバリ働きたいと思っていたキャリア初期から、息子さんが生まれたことでプライベートと仕事のワークライフバランスを考えるようになったキャリア中期。人生は働くことが全てではないと気づかされました。仕事のやりがいとプライベートの充実が相互に影響するため、双方の質を高めることが大切であると感じました。また、高畑さんがキャリア選択時に明確な判断軸を持っていらっしゃることから、自分のやりたいことを判断軸という明確な軸として明言することの必要性を学びました。
取材・文:橋口琴音
津田塾大学学芸学部国際関係学科/学士3年
校正:三浦梓