INTERVIEW

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プロフィール:大学院で植物生態学を専攻。修了後、2009年から環境省の自然保護官として勤務。1年間休職して夫のフィンランド赴任に帯同。2020年エストニアへの帯同を機に環境省を退職し、行政手続きのデジタル化に取り組む日本のIT企業でエストニアからフルリモートワーク開始。2021年からタルトゥ大学の技術職員としても勤務。

北欧の生きやすさの中で

フィンランド、エストニアと二度帯同された藤沼さん。働きやすく男女平等も進む北欧で見つけた違和感や、環境省の仕事を離れても自分の専攻を生かした活動を精力的に行っている話などをお聞きしました。

最初の帯同はフィンランドへ

ーフィンランドとエストニア、二度帯同されているとお聞きしました。大学卒業後から最初の帯同までのお話しをお聞かせください。

大学時代に植物生態学の修士号を取得し、環境省でその専攻を生かした自然保護官の仕事をしていました。北海道や沖縄、熊本など全国を転々として大変でしたが、やりがいのある仕事でとても充実していました。9年ほど働いた後、夫がフィンランドに赴任することになり、配偶者同行休業制度を利用して休職し、1年程帯同しました。それ以前に出産と育児のために2度産休や育休を取得したこともあり、休職に対して不安はあまりありませんでした。

フィンランドから帰国して一年半後に再びエストニアへ帯同。

フィンランドではどのように過ごされていましたか、また大変だったことなどはありましたか。

子どもがまだ小さかったので、子どもと一緒にゆったりした時間を楽しみました。一方で、せっかくフィンランドにいるのに何もしないのももったいないなと思い、フィンランドの自然保護官など環境行政の関係者を友人に紹介してもらったり、自分で直接連絡をとったりしてインタビューをしました。最初はフィンランドの人と話すだけでもとても緊張しました。英語の読み書きはある程度できても、話すことや聞くことはあまり経験がなかったので、とにかく準備に準備を重ねました。例えばインタビュー前には何を話すか英語で準備して、先方にも事前に送付。インタビュー中も録音して家に帰って聞き直すことを繰り返しました。語学の壁には苦労しましたが、一歩一歩ちょっとずつ前に進んでいるような感覚でした。調査の結果をまとめて、帰国後に日本の雑誌に記事を寄稿することができ、その時の達成感はとても大きかったです。

一度、フィンランドから日本へ帰国されたとお聞きしましたが、帰国されてエストニアへ再び帯同するまでどのように過ごされていましたか。

フィンランドから帰国して1週間以内には復職して、1年半また環境省で働きました。フィンランドで同業者にインタビューするなどフィンランド式の働き方を間近で見ていた後だったので、日本の働き方の非効率さなどに正直モヤモヤすることがありました。帯同前も日本の働き方には疑問を持っていたのですが、帰国後にはさらに強く思うようになってしまいました。

その1年半後、再び帯同が決まりました。今度はエストニアで、滞在は2年間の予定でした。しかし、配偶者同行休業制度による休暇は1度取得すると、帰国後に復職し5年程度勤務した後でないと再び取得することができず、残念ながら仕事を辞めて帯同することになってしまいました。

2度目の帯同は仕事を辞めざるを得ないことに対する葛藤、また仕事を辞めてでも帯同しようと決めた理由などありますか。

仕事が好きだったので残念な気持ちはありましたし、制度の柔軟性の低さも残念に思いました。経験のある人材を復帰させることができないことになるので、組織としても非効率的なのではないかと思いました。それでも帯同を決めたのは、家族が一緒にいて時間を共有したいという思いがベースにあったからです。

エストニアではどのようにお過ごしですか。

帯同する前にエストニアで仕事を見つけようと就活をしたのですが難しく、日本の会社でエストニアからフルリモートで参加できる仕事を見つけました。日本の行政手続きのデジタル化を進めている会社で、スマホで住民票を取ったり転出届を出したりできるようにする仕事をしています。エストニアは世界有数の電子政府先進国で、日本はその分野で大きく遅れをとっているので、自分がエストニアにいる強みを仕事に生かせたらと考えています。

その仕事の他に、エストニアで環境行政関係の仕事をしている方にインタビューをしたり、フィールドワークに同行させていただいたりしています。そのつながりで、エストニアの環境行政機関や環境NGOのセミナーで日本の環境行政についてお話しする機会もいただきました。2021年の10月からは、タルトゥ大学の自然史博物館の生物情報学チームで技術職員としても仕事しています。この仕事では、菌類を中心とした生物の遺伝子配列データベースの更新に携わっています。日本の大学や博物館などの研究機関と連絡をとったり、また先日はデータベースについて日本の学会のセミナーで発表をさせていただく機会があったりと、日本人であることを生かして仕事ができていると感じています。

タルトゥ大学の仕事はどのように見つけられたのですか。

私の前任として働いていた方がママ友で、彼女が転職することになり、あなたの専攻に近いのではないかと勧めてくれました。これまでに自分が関わってきた自然環境の分野に関連した仕事をしたいと思っていたので、良いご縁がありました。

フィンランドとエストニアでの生活を通して見えた日本の姿

帰国後の計画などありますか。

具体的に決めていることはないですが、北欧での経験を通して日本の働き方や行政の仕組みは非効率的で改善の必要があるなと強く感じるようになりました。フィンランドやエストニアでは、電子化が進んでいて柔軟性の高い働き方ができますし、効率性を重視して様々な制度や運用方法が設計されています。こちらで日本人と話していてもつい日本の不満ばかりになってしまうんです。不満を持つだけではいけないな、私自身、日本の行政で働いてきましたし人のせいにはできない、変えていかなければいかないという気持ちがあります。なので、日本の非効率的な働き方や行政の仕組みを変えることができるように貢献したいなと思っています。

駐妻さんへのアドバイスなどありますか

文化の違いや言葉が通じない環境での生活に不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。私自身、実際に帯同する時には初めての海外生活に不安もありましたし、まして海外で仕事をするなんて絶対に無理だと思っていたのですが、そんなことはない!と伝えたいです。趣味などを通じて現地のコミュニティに入ってみたり、近所の人に話しかけてみたりするところから、少しずつ不安は減って楽しめることが増えていくと思います。異文化での暮らしを楽しみながら、自分の興味のあるところからできることをひとつずつ増やしていけば、キャリアにもつながると思っています。

学生ライター感想:

フィンランドやエストニアで、日本でしていた環境保護官の仕事を軸に自分ができることを探し続ける姿が印象に残りました。英語に苦労したとおっしゃられていましたが、入念な準備で同業者インタビューやフィールドワーク、講演をやり遂げておられました。私自身も苦手な英語に弱気になってしまうことが多いですが藤沼さんのようなバイタリティを持って一つずつ逃げずに立ち向かいたいと思います。

取材・執筆:大園祥央

 津田塾大学2年

校正・文責:三浦梓

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