「ゼロから1を生み出す」どこにいても変わらない大切な軸
プロフィール:1981年生まれ。大学卒業後、製薬メーカーに総合職で就職。人事、営業、復興支援などの仕事を経験後、夫の駐在に伴い退職。インドネシアのジャカルタにて約5年帯同したのち本帰国。現在は営業の個人事業主として仕事をしています。
「ゼロから1を生み出す」どこにいても変わらない大切な軸
今回は、社内の復興支援室での業務経験、インドネシアへの帯同経験を持ち、現在は個人事業主として営業の仕事をされている溝口さんにお話を伺いました。働き方に対する思いや、帯同を経て変わった価値観に注目です!
地域とともに。奔走した日々
ー帯同前のキャリアについて教えてください。
入社後、人事部で4年間勤務後、希望していた営業部署に異動しました。多くの製品を扱っており多忙でしたが、やりたかった仕事ができとても嬉しかったです。その後は、2011年3月に起きた東日本大震災直後にできた、社内の復興支援室へ異動し、東日本大震災の被災地復興に向けてさまざまな取り組みを行いました。震災後2年目というタイミングだったことや、企業のイメージアップにボランティア活動が利用されていることに現地の方が傷ついており、異動当初は「何しに来たんだ、帰れ」と言われたこともありました。被災者の方に安易な言葉をかけることもできず、地域に受け入れてもらいながら地域にプラスの価値を生み出すことの難しさを感じました。
復興支援室では、地域に新しい価値を生み出すことを軸に廃校を子供たちや親子で利用できる施設に変えるモリウミアスの立ち上げを一緒に取り組んだり漁師の会社をサポートしたり水産加工会社の販路拡大や付加価値を付けた商品開発にも携わらせていただきました。
喪失感を感じていた私が今できることを探し行動するまで
ーその後、インドネシアへの帯同が決まったのですね。
当時、駐在帯同の制度が整っていない中で、会社から休職の選択肢もいただきましたが3年~5年という期間での帯同予定だったこともあり、退職を決めました。これまで大変なこともありつつも仕事が大好きだったこともあり、無職になってからのインドネシア帯同直後は喪失感でいっぱいでした。
誰も知り合いがおらず、言葉も通じず、仕事もないという状況に慣れず、家にいることがストレスでした。しかしその後、いろいろなことを経験して、インドネシアの自由な雰囲気を魅力的に感じられるようになりました。
ーインドネシアではどのような生活をされていたのですか。
現地にある語学学校を通じて、初めて友達ができ、ランチに行ったり、日常生活で困ったことを助け合ったりと日本人同士の交流を楽しみつつも2年たった頃からはまた何か帰国後の再就職につながる何かをしたいと感じていました。
インドネシアは就労ビザがないと働けなかったため、ボランティア活動を始めたり、現地のジャカルタキャリアカフェへの参加を通じて、プロジェクトを立ち上げ、日系企業のローカルマーケティングや現地企業のビジネスマナー研修の企画に携わりました。またインドネシアでイスラム教の人と身近に暮らすことで世界には多様な考えを持つ人がいることを改めて実感し、価値観が大きく変わったことも帯同して良かったと思うひとつの理由です。インドネシアでの出産や子育てを通じて、子供に対する寛容度の高さや寛大な個性の認め方を肌で感じれたことも私の人生においてとても貴重な時間だったなと帰国後、感じています。
帯同期間を経ての働き方
ー帰国後のキャリアについて教えてください。
帰国後は元の会社に戻ろうと考えていましたが、就職活動を進める中で、一般社会ではまだまだインドネシアにいた4年間=ブランクと捉えられてしまう壁にぶち当たりました。企業によっては、駐在妻がどんなものかイメージのみが先行していることも多く「駐妻」=「遊んでいて何もしていない」と考えられてしまうこともあります。いろいろなタイミングとご縁で、現在は個人事業主として営業の仕事をしています。地方のベンチャー企業と関わっていく中で、人数が少ない分1人の役割が大きく、自分で考えて行動していくことが求められる中で自分でゼロから企画し、販売戦略を考えるという点にやりがいを得られています。地域に新しい価値を生み出して現地に貢献したいという思いは前職の復興支援室で仕事をしていたときと変わってないように感じます。
一方で個人事業主としての働き方は、とても面白く自分の強みを活かせることもあり楽しいですが、もともとチームで働くことが好きなので、少し寂しさもあります。1人ではなく、誰かと一緒に「自分が携わることで価値を生み出す仕事」ができればよりモチベーションがあがると感じていることもあり、今後はもう少し多様な働き方を模索してみたいなと感じています。
ー最後に読者の方にメッセージをお願いします。
帯同先の土地を好きになることは帯同期間にしかできず、貴重な時間だと思うので、ぜひ充実させてほしいです。また、帯同先での出会いや縁を大切にしていると、いつか何かにつながると思いますので、不便な環境だからこそ、その環境を楽しんで、助け合ったり、相談しあったりを通して絆を大切にしていただければと思います。現地でのつながりは一生ものだと思うので、特別な帯同期間を楽しんでください。
学生ライター感想:
溝口さんのキャリアに対する積極的な姿勢が印象的で、「ゼロから1を生み出す」という信念を大切にされていることが感じられ、大変勉強になりました。
取材・執筆:鎌田睦美
津田塾大学3年
校正:室田美鈴(駐妻キャリアnet)文責:三浦梓(駐妻キャリアnet)