「海外にいる」ことにとらわれず、海外でやりたいことを
プロフィール:大学院卒業後SIerに就職。ECサイトや自社メディアの運用に携わった後、ウェブ広告代理店に転職。自身の適正を再考して元の会社に戻り、システムエンジニアとして主に上流工程を担当する。2021年配偶者の海外転勤により会社を退職しアメリカ合衆国に渡航。渡航後はプロボノ参画もしつつオンライン大学で勉強中。
「海外にいる」ことにとらわれず、海外でやりたいことを
京都大学大学院卒業後、インターネット広告業界へ。主にプロジェクトマネジメントの力をつけ、配偶者に帯同するため退職。現在はニューヨークに帯同し、オンライン大学に通いながら、プロボノにも挑戦しています。
自分にあった専門性を探し、身につけた日本でのキャリア
ー帯同前のキャリアについて教えてください。
京都大学大学院農学研究科を卒業後、インターネット広告系の企業にSEとして就職しました。就職活動を始めた頃は食品や薬品関係の研究開発職の選考を受けていましたが、なかなか縁のある企業に出会えませんでした。そこで改めて自己分析をしたところ、自分はすでにある商品や団体について魅力を伝え認知度を高めることに関心があると気づいたため、広告関連の会社に志望を変え、ご縁のあった広告システム開発会社に入社を決めました。入社後は、SEの仕事だけではなくWebメディアの運用や広告プロモーションなどさまざまなお仕事に関わらせていただきました。
ー1つの会社で幅広い業務に携っておられたんですね!
はい。私がやってみたいと言うとすぐに任せてもらえる環境でした。しかし社会人3年目の終わりごろ、自分には専門性がないことに気づいたんです。そこで主にインターネットの広告運用の専門スキルを磨きたいと考え、転職しました。しかし、新しい会社での仕事内容ややり方にうまく自分を合わせることができず、5カ月で前職に戻ることに。両方の会社に迷惑をかけてしまいましたが、やってみたかった業界に入って合わないことがよくわかったので踏ん切りがついて良かったです。また1回転職を経験し、改めて自分の軸になるスキルをしっかり身につけないと駄目だと痛感しました。そしてその後は元の会社でプロジェクトマネジメント業務を主に担当していました。
ーそれから帯同するまでには、どのような経緯があったのですか?
大学時代から交際していたパートナー(現在の配偶者)が、海外勤務を希望していたのでいつか海外にいく可能性があることはわかっていました。
しかしいざ海外勤務が決まったと言われた時、メリット・デメリットを洗い出し、一度は帯同しないという結論を出しました。キャリアの面でも大きなプロジェクトを任されたときでしたし、大事にしている趣味も海外で続けるのは難しいと思っていたので。しかし、私の両親に反対されて改めて話し合うことになり、折衷案として配偶者の会社が認める半年ギリギリまで1人で日本で生活し、その後帯同することにしました。
ー帯同までの半年間、仕事の他にされていたことはありますか?
帯同中に取り組むことを探したり、帰国後の再就職時に備えた情報収集、英会話の勉強、持病に関わる準備もしていました。帯同中に取り組むこととしては、当時SEとしての技術力や基礎に課題を感じていたのでオンラインで海外大学に通うことに決め、渡航前にも講義を少し受講していました。帰国後再就職できるかがとても不安だったので、転職エージェントに連絡を取り、再就職時に備えた情報収集をしていました。これまでの職務経歴と帯同予定年数、帯同中に大学で学位を取る予定であることを伝え、面談も数社行っていただきました。
大事なのは、今どこにいるかではなく、今自分が何を大切にしたいか
ー帯同後に行っていることを教えてください。
帯同直後は、「働いてないから」「せっかく海外にいるんだから」と言い聞かせ、慣れない土地での生活、家事、英会話、ボランティア、大学などいろいろなことを頑張っていました。
しかし、それらに大学の試験が重なったときパンクしかけ、それ以降無理はしないと決めました。今は、週30時間くらい大学の勉強、4-8時間は駐妻キャリアnetで募集があった案件にプロボノとして携わる、という感じの比率で生活しています。渡航前に訪れた転職エージェントで、私の職歴であれば正社員としての再就職はおそらく可能だが、できればフリーランスなりなんなりで少しでも仕事は続けたほうが良いと言われていたため、プロボノへの参加を決めました。
ーそれでは、今は現地の人との関わりはあまりないのですか?
はい。初めは、それこそせっかく海外にいるからと思い、アメリカの人に日本語を教えるボランティアに参加し関わりを持っていました。しかし、無理はしないと決めて以降そちらもお休みしているので、今は日本のコロナ禍での生活と同じような生活をしています。私がそうだったように、駐妻さんのなかにはせっかく海外にいるのだから海外でしかできないことをしなければと思う人がいるかもしれません。でも決してそのようなことはなく、場所にとらわれず、今自分がやりたいことをやっていく選択肢も忘れないでいただきたいです。
誰にもわからない将来、より良いキャリア選択の可能性を求めて
ー帰国後のキャリアについて考えていることをお聞かせください。
帯同期間が予定通りあと2年程であれば、オンライン大学を卒業し日本で再就職したいと考えています。もし帯同がそれ以上伸びたら、大学院に進学するか先に帰国し再就職するかだと思います。再就職に際しては、オンライン大学で学んだ技術力や基礎知識を生かしたいです。また、オンライン大学を卒業することができたら、この学歴は、将来また帯同があるとき、帯同先で働ける可能性も高めてくれると思っています。
学生ライター感想:
失敗を分析し学びを得て行動に繋げていく姿が印象的です。日本での転職経験、アメリカで頑張りすぎた経験の双方で、現状をしっかり分析し学びに変えていっており見習いたいです。
取材・執筆:渡辺璃香
慶應義塾大学大学院 修士2年
校正:中山斉奈
文責:三浦梓