【駐妻キャリア総研・研究結果報告】配偶者の海外勤務等を経験する女性の就労意向について


共働き世帯やキャリア志向の女性が増えている今、海外に帯同しながら働いている駐妻たちは、どのような状況で、何を思っているのか。
海外帯同中の仕事の状況や、働きたい理由、働く上でのネックになる要因などについて、駐妻たちにアンケート調査を行った結果をご報告します。

調査結果概要

  • 「働きたい」駐妻が約95%、一方「仕事・収入あり」は約36%
  • 働く上での障壁はビザ、時差、語学に加え妊娠出産育児、税金、配偶者の職場規定や帰任時期など多数。フリーコメントには切実な声。
  • 障壁を乗り越え働く駐妻の増加。キャリアブランク不安も背景か。収入面のメリットはなくとも、やりがい・満足感、キャリアアップに大きくつながる。
  • 「駐妻は働けない」問題は社会的にも損失、国際的にも遅れ。制度の改善や柔軟な運用を期待。

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目次

海外帯同中の仕事の状況

(n=92)

全回答者の約3分の2(うち駐妻キャリアnet会員については約8割)が仕事や学業等に従事していることが分かった。

一方、帯同先においてはビザ規定等の関係で収入を得ることが難しい側面もあることから、無報酬の活動や学業に取り組んでいる人も20%以上おり、収入のある仕事をしている人は約36%という結果であった。ビザの条件や配偶者の職場の規定等をクリアし有償で働いている人の仕事内容としては、日本企業からのリモート業務委託が多いようだが、語学力や専門スキルを活かし現地就労中の人もいた。

仕事をしている人の中には、現地で働くために帯同ビザを断り自身でビザを取得した例、収入発生によって家族手当等のベネフィットが打ち切られ赤字になるケースも見られた。

なお、駐妻キャリアnet非会員については、「仕事はしていない」または「帯同を選択しなかった(日本に在住しながら仕事をしている場合等を含む)」と答えた人の割合が高かった。

*寄せられたフリーコメント

駐妻は「働きたい」のか

(n=92)

※帯同中に「働きたい」「仕事をしたい」という気持ちはあるかどうかを全員に質問。(n=92)
※「ある」には、条件が整えば/求人があれば働きたい場合、収入の発生しない活動等を行いたい場合を含む。

全体の約95%、駐妻キャリアnet会員については全員(100%)が働きたい気持ちが「ある」と回答した。一方、回答者の約3割が「仕事はしていない」と回答していることから、駐妻が海外で働くことには様々な障壁や制約が伴うと考えられる。

駐妻の「働きたい」理由

(n=87)

※帯同中に「働きたい」「仕事をしたい」という気持ちが「ある」と回答した方に質問。(n=87)
※11個+「その他」の選択肢のうち、特に当てはまるものを「3つまで」選択する形式とした。

「収入を得るため」よりも「スキルの維持・向上のため」と回答した割合の方が高い結果となった。「やりがいを得るため」と回答した人も多かった。背景には、これまで築いてきたキャリアを本当は帯同によって中断させたくない、帯同後のキャリアを考え自己研鑽を続けたいという思いや、帰国後の再就職不安等もあると考えられる。

*寄せられたフリーコメント

何が駐妻の「働く」を妨げるのか

(n=87)

※全回答者に質問。(n=87)
※21個+「その他」の選択肢のうち、特に当てはまると思うものを「5つまで」選択する形式とした。
※グラフでは、選択率上位12個の選択肢を抜粋してまとめている。

駐妻の「働く」を妨げる要因としては、帯同先のビザ・労働関係規定、現地就労に必要な語学力時差といった即時の解決が難しいものもあるが、「情報やロールモデルが不足している」「働くために必要な手続きが分からない」「配偶者の職場が帯同家族の就労自体を禁止している」「育児との両立が日本以上に困難」といった、企業側の努力や配慮によって改善が見込まれうるものも挙げられた。

また、帯同家族が海外において収入を得ること自体に多額の費用負担もしくは家族手当・福利厚生の不適用が発生する、日本と帯同先との物価差が大きい等で働いても金銭的なメリットが得られないケースや、配偶者の帯同期間や帰任時期に依存するため就職や安定した就労継続が難しい事情もあることが分かった。

「働きたい」駐妻の希望を叶えるために企業側がとりうる具体的な方策としては、帯同家族の就労に関する規定の見直し、帯同先における労働関係の規定に関する情報提供税理士の紹介保育や育児サービス・語学学習への補助等が考えられる。

IT化や在宅勤務の普及により、「海外にいながら日本の仕事をリモートで請け負う」ことも駐妻の選択肢のひとつとなりつつある今、「駐妻は働かないもの」という価値観からの脱却時代の変化に応じた制度の見直しが必要なのではないだろうか。

*寄せられたフリーコメント

参考:帯同中の仕事等に対する満足度(仕事等ありの回答者に質問)

(n=61)

※仕事、就職活動、学業、無報酬の活動のいずれかに従事していると回答した方に質問。(n=61)
※仕事等の内容、収入や待遇等の総合的・主観的な満足度について質問。「帯同前後と同程度の満足度の場合は3」を基準に、日本在住中の仕事等に対する満足度と比較した度合いを5段階から選択する形式とした。

海外帯同中は、仕事等に従事したとしても収入の減少や働ける時間・仕事内容の制約が生じる場合が多いことから、帯同前後と比較した満足度は低下すると予想されたが、結果は満足度3以上と回答した人が77%であった。少なからずの駐妻たちが、制約のある中でも目標ややりがいを見つけ、家庭生活も大切にしながら前向きに研鑽に励んでいることが分かった。

*寄せられたフリーコメント

参考:仕事等なしの理由(仕事等なしの回答者に質問)

(n=28)

※帯同中に「仕事はしていない」「仕事をしていない期間の方が長い」と回答した方に質問。(n=28)
※当てはまるものを全て選択する形式とした。

仕事等をしていない理由としては、制度や規定の問題でそもそも働くことができない/働くことが難しい育児に専念中(※)と回答した人が多く、「希望の条件に合う仕事が見つからない」、「働く意欲やメリットが特にない」といった回答は少なかった。
(※)妊活中、妊娠中といった回答も含む。

こうした回答傾向から、海外在住の駐妻や育児中の女性が働きやすい仕事は極端に少ない、もしくは人材と仕事とのマッチングが成功していないという課題があることが分かる。企業や社会には、働くことを妨げる制度の壁の解消、及び育児や家庭生活との両立が可能な働き方の普及が特に求められているのではないだろうか。

また、本アンケートでは「帯同を選択しなかった(日本に在住しながら仕事をしている場合等を含む)」女性からも回答を募っている(十分な回答数が集まらなかったため、集計結果の公表は割愛)。「帯同を選択しなかった」理由としては、帯同による世帯収入の減少や、キャリアの中断育児負担物価差への懸念等が挙げられた。

まとめ

今回の調査により、「働きたい駐妻」や「駐妻の働き方の選択肢」は確実に増えていることが浮かび上がるとともに、駐妻たちの具体的なニーズについても明らかにすることができた。共働きや女性のキャリア継続が一般的となっている今、配偶者に帯同し海外で生活することとなった駐妻たちは、「キャリアの中断は不本意」、「働きたい」という気持ちを有していることも少なくない。しかしながら、帯同先では「そもそも就労が認められない」「どうしたら就労できるのか分からない」という壁が立ちはだかるばかりか、この壁を乗り越え働けたとしても、「働き続けるハードルも非常に高い」、「金銭的なメリットは得られない」という状況を受け入れなければならない。

「制約やハードルを乗り越えてまで無理に働く必要はないのでは」という声も挙がるかもしれないが、帯同によるキャリアのブランクには、世帯収入の減少以外に、「女性活躍が進む現代社会での再就職の難しさ(回答者の大半を占める30代以上や育児中の場合は特に)」も付きまとう。

代償に打ちひしがれているだけでは現状は変わらないし未来は開けない。そのことから、自身を奮い立たせ、たとえ十分な収入にならなくても、家族手当が打ち切られたとしても、スキルややりがいの維持長期的なキャリアアップ等を目的に、前向きに仕事に臨む駐妻や就労を目指す駐妻も一定数いることが分かった。

制度の壁により働くこと自体が叶わないというのは、駐妻本人にとっても企業・社会にとっても損失でしかない。たとえば女性の就業率が約85%のフランスでは、CAC40に上場する企業は配偶者が駐在国で仕事を見つけられるよう補助する義務があり、駐妻が現地の言葉や興味のある分野を学ぶための費用の援助、仕事探しの支援が設けられているようである(※)。日本においても、希望の職に就くための駐妻個人の努力と、駐妻に寄り添った柔軟な制度運用や情報提供等といった企業の努力が重なれば、駐在員・帯同家族の生活満足度の向上はもちろんのこと、意欲や能力のある人材の活用、ひいては女性活躍・社会経済の発展にもつながるといえよう。

(※)参考:駐妻キャリアnetインタビュー記事

調査概要

  • 調査手法:WEBアンケート(無記名式)
  • 有効回答者数:92名 ※女性のみ
  • 調査実施日 :2023年11月5日(日)~2023年11月19日(日)まで
  • 調査対象者 :配偶者の海外勤務や海外留学を経験したことのある女性 ※駐妻キャリアnet非会員、帯同を選択しなかった方等も対象
回答者属性(駐妻キャリアnet会員状況、現在の立場、年代について)
※プレ駐妻の方は帯同後の予定について、元駐妻の方は直近の帯同中の状況について回答いただいた。

(駐妻キャリア総研研究員:千葉)