【駐妻キャリア総研・研究結果報告】元駐妻の再就職状況について Part.3
– 駐妻は帰国後キャリアチェンジする!?-


前回のレポート「元駐妻の再就職状況についてPart.2」において、帯同による無業期間や帯同中の活動が与える再就職後の収入についての示唆をお伝えした。今回は、回答者の多くが大企業で正社員として就労していた(回答者の属性はこちら)ことを踏まえ、帯同前のキャリアの観点から、アンケート結果をご報告したい。(有効回答数:34件)

調査結果概要

  • 帯同前のキャリアや能力に自信がなくても、帯同中の活動は再就職時の収入にプラスに働く
  • 同一職種での再就職や帯同時の就業などキャリアの継続性は収入増のカギ
  • 元駐妻の3分の2は、再就職にあたって帯同前の職種を変更する


目次

帯同前のキャリアと再就職後の収入

配偶者の海外勤務などへ帯同する場合、期間が当初から定まらない場合や帯同先でできることが制限される場合もある。帯同前に築いたスキルや経験が陳腐化してしまう可能性があるのである。逆に帯同先の活動によっては新たに能力を磨くことも可能である。このような観点から、「帯同前のキャリアや自分の能力について、再就職する場合にどの程度生かせると考えていたか」と再就職後の収入の関係をまとめたのが下のグラフである。

少数ではあるが、「あまり生かせると思っていなかった」にも関わらず、収入+10%を実現した方がいる。彼女たちが再就職にあたってアピールした点はフリーコメントから次のものであった。帯同前のキャリアに加え、帯同中の活動で新たな資格やスキルを得ていることがわかった。

  • 帯同中の現地就労、ボランティアで得た多様なステークホルダーとの折衝経験。帯同前のキャリアでのプロジェクトマネジメント力。
  • 帯同中にMBAを取得し、前職での活動をアピールした。

一方で、「非常に生かせると思っていた」の方の中でも収入の増減はばらつきがある。「非常に生かせると思っていた」かつ収入+10%の6名中4名は、帯同前と同じ職種で再就職していた。また、6名中5名は帯同中も現地企業で就業またはリモートワークを実施しており、キャリアのブランクも短期間であった。このことから、収入の増加にはキャリアの継続性がカギとなるのではないかと考えられる。

職種の継続性

帯同前のキャリアや能力が再就職に際して「非常に生かせると思っていた」場合、帯同前と同じ職種であれば、即戦力としての雇用につながるため、同じ職種を選択することが多いのではないだろうか。アンケート結果によると、下のグラフの通りとなる。生かせると思っているほど同じ職種を選択する場合が多いものの、実際には「非常に生かせると思っていた」にも関わらず、半数以上が職種を変更している。また、円グラフの通り、回答者全体で見ても、職種を変更しているほうが多かった。

まとめ

海外への帯同は否応なしに環境の変化をもたらす。日本にいたら出会わなかった人々との出会いや忙しい日本での生活では実現しなかった経験を促し、自分自身の考え方を改める機会となりうる。私自身、夫の留学に帯同した際に自分もMBAを取得し、帰国後、独立行政法人から外資メーカーへ転職した。今回のアンケート結果からも、帯同中の経験がその後のキャリアに影響を与えることも大いにあると考えられる。

大企業の正社員という立場を手放し、海外に帯同することに不安を感じることもある。現地で思うような活動ができずに閉塞感を味わうこともある。帯同の決断を後悔することなく、海外生活を充実させ、自分らしいキャリアを築いていくために、何ができるのであろうか。今後、キャリアに有効な帯同先での活動について調査を進めたい。

現在、帯同中の方、これから渡航する方にとって、今回のアンケート結果が参考になれば幸いである。

調査概要

  • 調査手法  :WEBアンケート(無記名式)
  • 有効回答者数:34名
  • 調査実施日 :2023年12月16日(土)~2023年12月30日(土)まで
  • 調査対象者 :帯同前に就労していた方で 配偶者の海外勤務・海外留学等を機に退職し、帰国後再就職した方(退職者の再雇用制度を活用した場合も含む)※駐妻キャリアnet非会員も対象