【駐妻キャリア総研・研究結果報告】元駐妻の再就職状況について Part.2
– 収入アップには帯同中の現地就業・リモートワーク・ボランティア!?-


前回のレポート「元駐妻の再就職状況についてPart.1」において、帯同を機に退職した元駐妻が帰国後に再就職した場合、4割強の方が10%以上収入を減少させていることをお伝えした。一方で、3割の方は10%以上収入を増加させている。今回は、これらの違いを生み出すのは何か、に焦点を当て、アンケート結果をご報告したい。(有効回答数:34件)

調査結果概要

  • 収入増グループの7割は無業期間3年未満
  • 収入増グループの8割は帯同中も現地企業での就業やリモートワーク、ボランティアを実施
  • 再雇用制度の有無にかかわらず、同一企業への再就職は収入の維持・向上に寄与


目次

帯同中の活動

下のグラフは、帯同前の収入と帰国後再就職した際の収入の変化について、+10%以上(「収入増グループ」)、±10%(「収入維持グループ」)、-10%以上(「収入減グループ」)の3つに分けて、無業期間、いわゆるブランクを示したものである。収入増グループは、ほかのグループと比べ、無業期間が少ない傾向にあると言えるのではないだろうか。

それを裏付けるように、帰国後の再就職を見据えて帯同中に実施したことをグラフにしてみると、収入増グループでは、現地企業での就労やリモートワークによる就業の継続やボランティアをしていた割合が高いことがわかる。

一方で、収入増グループでは、語学の学習を筆頭に、帯同を学びの機会としていた割合は少ない。収入増グループでも、再就職活動時に学びをアピールする場合は複数あり、その内容はUSCPAやMBAであった。帯同期間を学習する機会とする場合は、再就職に直結するような資格を吟味する必要がありそうである。

同一企業への再就職の効果

再就職先を決定した際のサービス等の問いに対して、「帯同前に勤務していた会社への再就職」と回答した方は収入を維持・増加させていた。退職者の再雇用制度の有無にかかわらず、再就職をしていた。過去には、以前は正社員であったものの、再就職時は正社員として採用されずに収入が下がるという事例もあったようだが、今回のアンケートでは10%以上減少したという回答はなかった。

同一企業への再就職は、被雇用者側の収入の維持・増加という観点からだけでなく、組織風土や同僚を知っている環境への再就職はストレスも軽減できる点のほか、雇用側にとっても採用リスクや教育コストが小さいことなどのメリットがある。

まとめ

日本では男女間での賃金格差が大きい。帯同する側が女性であることが多い現状を考えると、自身の仕事を退職し配偶者に帯同することで、帰国後も収入が減少してしまうことは問題である。この問題意識から、今回は収入を切り口にアンケートをまとめた。

帯同中はビザや配偶者の会社規程により、就労できない場合も多いが、上述の通り、収入を維持・増加させていくためには、帯同先でも就労を継続することが効果的である。自分の匙加減でやってもいいし、やらなくてもいいような語学などの学習よりも、報酬は発生しなくても、相手が満足するようサービスを提供するボランティア、プロボノという働き方を含めて、働くマインドを継続することが大事なのではないだろうか。また、帯同中は長期的な視点で働くことが難しい一方、自由度は高いため、帯同期間を再就職活動時にアピールしたいスキルを得られるような経験を戦略的に獲得する機会にすることができるのではないだろうか。

現在、帯同中の方、これから渡航する方にとって、今回のアンケート結果が参考になれば幸いである。

調査概要

  • 調査手法  :WEBアンケート(無記名式)
  • 有効回答者数:34名
  • 調査実施日 :2023年12月16日(土)~2023年12月30日(土)まで
  • 調査対象者 :帯同前に就労していた方で 配偶者の海外勤務・海外留学等を機に退職し、帰国後再就職した方(退職者の再雇用制度を活用した場合も含む)※駐妻キャリアnet非会員も対象