【駐妻キャリア総研】 夫婦での対話により、キャリアへの良い影響が「あった」82.5%。週に1回以上対話している人は77.5%。「互いの働く価値観の認識」「モチベーション向上」につながる。


キャリアを継続したい駐妻の実情や本音を探る調査機関『駐妻キャリア総研』(運営:駐妻キャリアnet)は『デュアル・キャリア夫婦の対話によるキャリア影響』をテーマに、キャリアに関心のある駐妻キャリアnetの会員の女性にアンケート調査を行いましたので以下にご報告します。 (有効回答数:45件)

調査結果概要

  • 自分たちは「デュアルキャリア夫婦」だと思う人は92.9%
  • キャリアへの良い影響が「あった」人は82.5%。
  • 話す頻度最多は「週に2~3回(32.5%)」、次いで「週に4~6回(22.5%)」全体の77.5%の人が週に1回以上話していることがわかった
  • 話す頻度が月に1回の場合、75%の人が「キャリアへの良い影響がなかった」と答えた
  • 良い影響が「あった」人が話す内容は、 「自分の今の仕事」(33.3%)と「配偶者の今の仕事」(33.3%)が最多。※単一回答で取得
  • 良い影響が「なかった」人が話す内容は、 「配偶者の今の仕事」57.1%。「自分の今の仕事を話す」人は0%だった。※単一回答で取得
  • 良い影響が「あった」人が対話時意識していることは、「お互いのやりたいことのすり合わせや正直な自分の気持ちを伝える」
  • 良い影響が「なかった」人が対話時意識していることは、「自分の負の感情抑制」

目次

デュアル・キャリア夫婦の実態

デュアル・キャリア夫婦とは、「二人とも自分の職業生活が人生に大切で、仕事を通じて成長したいと考えているカップル」のことをさす。近年、欧米では夫婦の標準型となり、その数は増加傾向。日本ではまだまだ少数派と言われているが、実態はどうなのか。

※自分たちはデュアル・キャリア夫婦だと思うかどうかを全員に質問。(n=42)
※空欄回答者除く

結果、なんと92.9%の人が自分たちはデュアル・キャリア夫婦だと思うと答えた。日常、仕事やキャリアについて対話すると答えた人は、88.9%。この結果から、デュアル・キャリア夫婦において「仕事やキャリアについて対話すること」は日常行われている。

キャリアへの影響

さらに、対話が及ぼすキャリアへの影響度で「よい影響があった」と答えた人は、82.5%。

具体的にどのような良い影響があったか、いただいたフリーコメントより以下に分類した。(フリーコメントから一部抜粋)

(1)お互いのキャリアの価値観を認識
・自分と夫の双方が納得する方向に進むことができている(30代)
・相手に自分のキャリアや仕事の重要性を一定程度理解してもらえていると思う(40代)
・希望を先に伝え、その背景も伝えることで、互いの理解が深まり、目先のことにとらわれた喧嘩が減ったと思います(30代)

(2)新たな視点でのアドバイスや刺激
頭の整理が出来る。こんな考え方もあるのかと参考になる(30代)
・夫のほうがよりキャリア重視のため、自分だけで考えているよりもさらにストレッチした目標を持たされることが多い(30代)
・土日も仕事のために勉強する姿に、こちらも負けていられないとやる気になった。その結果、新しい仕事を獲得できた。(40代)

(3)応援や協力により、モチベーション向上
「いいんじゃない」「やってみたら」といった一言で、「やってみよう!」という気持ちになれて、現地採用に挑戦できた(30代)
・望むキャリアへの理解や応援、家事をほとんど担ってもらえたのでキャリアに全力投球できた(30代)
・夫も、私に相応しい仕事の求人がないかアンテナを張ってくれます(20代)

キャリアへの影響×(頻度・内容)

キャリアへの影響に頻度と内容はどう関係しているのか。

(1)頻度×キャリアへの影響

話す頻度最多は「週に2~3回(32.5%)」、次いで「週に4~6回(22.5%)」全体の77.5%の人が週に1回以上話していることがわかった。しかし、話す頻度が月に1回の場合、75%の人が「キャリアへの良い影響がなかった」と答えた。

※「日常、仕事やキャリアについて対話をするか」の質問に対して「はい」答えた人に質問。(n=40)

(2)内容×キャリアへの影響

キャリアに良い影響があった人(下記の図「はい」)が話す内容は、「自分の今の仕事」(33.3%)と「配偶者の今の仕事」(33.3%)が最多。※単一回答で取得。一方、キャリアに良い影響が「なかった」人(下記の図「いい」)が話す内容は、「配偶者の今の仕事」57.1%。「自分の今の仕事を話す」人は0%だった。※単一回答で取得

対話による「キャリアへの良い影響」は互いのキャリアの価値観の認識や、今の状況を好転させる視点やアドバイスにつながる。互いに仕事を通じて成長したい夫婦だからこそ、片方だけのキャリアの話中心にならないようにすることが重要である。

※「日常、仕事やキャリアについて対話をするか」の質問に対して「はい」答えた人に質問。(n=40)

キャリアへの影響×(対話時、意識していること)

いただいたフリーコメントを分析した結果、双方に共通していることは、「相手への感謝や応援」

キャリアに良い影響が「あった」人が意識していることは、「お互いのやりたいことのすり合わせや正直な自分の気持ちを伝える」のに対し、良い影響が「なかった」人が意識していることは、「自分の負の感情抑制」だった。

(1)良い影響があった人
・今思っていることを正直に伝えること、また、相手のキャリアを尊重すること(30代)
お互いのやりたいこと優先順位を明確にする(20代)
・一番大事にしたい人生の価値観についてすり合わせ。キャリアの方向性の相談は自分で決める前に事前にするようにしています。(30代)

(2)良い影響がなかった人
・夫は私と全く異なる職種なのだが、言っていることがたとえ理不尽だとしても、その話を否定せず聞くことにしている(30代)
・現在キャリアをセーブしていることによるフラストレーションや嫉妬の感情を相手にぶつけず、応援する。(30代)
・夫の赴任で海外に来ていることもあり、夫のキャリアをうらやましく思いますが、海外赴任のたびに断絶せざるを得ない自分のキャリアを思うと、とても残念に思っていますが、それは口に出しません。(50代)

まとめ

デュアル・キャリアの研究論文を読むと、重要だと書いてある「対話」。今回のアンケートでは、果たして日本人のデュアル・キャリア夫婦はどうなのか検証した結果、「キャリアに良い影響があった」と答えた方が82.5%と高い水準にあった。お互いのキャリアを理解し、応援しあえる環境を夫婦自ら作り、互いに切磋琢磨している様子が伺われた。一方で、「キャリアに良い影響がなかった」と答えた方の声に、対話の在り方に気づかされた。

駐在帯同により、駐妻側はキャリアの中断を余儀なくされたり、収入の面で配偶者に引け目を感じたり、負の感情になる時がある。しかし、その思いが生まれることはごく自然なこと。負の感情に蓋をすることなく受け止め、何ができれば自分のモチベーションが上がるのか考え、夫に伝えることが重要。

夫婦といえども、話さないと何を大切にしているのか、どうしたいのかわからない。だからこそ、「相手がどんなキャリアを希望しているのか」「キャリアで大切にしているものは何か」を理解することから始める必要がある。そしてお互いの今の仕事や今後のキャリアを考える時間を週1回以上とること。結果、相手が何をしたいのかわかると、応援したり話をする内容も変わってくる。応援されたり、励まされると絆が強まり、様々な試練や苦難を共に乗り越える夫婦になるのではないだろうか。

調査概要

  • 調査手法:WEBアンケート(無記名式)
  • 有効回答者数:45名
  • 調査実施日 :2023年11月26日(日)~2023年12月10日(日)まで
  • 調査対象者 :駐妻(夫)になる前、共働きの夫婦。(雇用形態:正社員/契約社員/アルバイト・パート/派遣社員/個人事業主など)

担当:駐妻キャリア総研所長 三浦梓

プロフィールはこちらをご覧ください。

次回、「仕事やキャリア」について話をしないと答えた夫婦の研究報告を実施。