駐在員企業の3割のみが駐在員配偶者へキャリア支援を実施。配偶者の9割以上が企業からのキャリア支援現状に満足ではなく、語学学習補助よりも就労許可、就労情報の積極的提供を期待する。

日本の駐在員雇用主の7割が駐在員配偶者へのキャリア支援制度を設けていない。
配偶者の9割以上が現状のキャリア支援制度に満足ではなく、駐在員雇用主に対して、語学学習補助よりも就労許可、就労情報の積極的提供を期待する

調査結果概要

  • 駐在配属を成功させるには駐在員配偶者の帯同生活に対する満足度が大きく影響するとの調査があり、駐在員雇用主は配偶者から駐在員への波及効果を無視できない(配偶者の満足度が低い場合、駐在員の生産性低下、従業員の流動性低下に繋がる)。
  • 上記理由で、調査によると海外では転勤時に駐在員配偶者に対して78%の雇用主企業側でキャリア支援制度を設けていると言われている※。一方、駐在員を派遣した日本の雇用主がそれをどこまで考慮して、そして支援するように行動しているか、帯同を選択した配偶者は駐在員雇用主からの支援をどう捉えて、また実際どんなことを期待しているか調査しましたので、結果をご報告致します。

※キャリア支援制度とは「過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指すもので、職業生涯や職務経歴など」(引用:厚生労働省)に対して行う支援制度のことを指す。

(※)令和2年転職者実態調査の概況(個3.転職について)|厚生労働省(PDF)

目次

駐在員雇用主から配偶者へのキャリア支援制度有無と満足度

駐在員雇用主から配偶者へキャリア支援制度有無




駐在員雇用主からのキャリア支援に対する配偶者満足度

帯同配偶者が駐在員雇用主に期待するキャリア支援内容について

(1)帯同配偶者の現地就労を認める
・駐在妻の就労を認めて欲しい。
・帯同家族の就労を認めてほしいです。
・そもそも就労が認められていないので全く無し
・妻が働きたいとなれば家賃補助等の福利厚生が対象外になるというので雇用機会を得られないのは残念だと思っています。
・就職への許可
・長年ある駐在ポジションにも関わらず、現地就労に制限がある事、帯同者のサポートは一切無く
・​​​​​​​​語学補助はあるが生活が落ち着いた頃には使えない。そもそも就労を認めてほしい。
・別会社でオンラインで働くことはできたのに、夫の会社からの就労禁止で休職せざるをえなかった。

(2)就労機会、就労手続き等情報の提供
・現地で就労した際の手続き(特に税金関係など)について教えてほしい。
・現地就労の経験がある駐妻の紹介
・働くための諸手続きのサポートや費用負担、税理士・税務関係の情報
・オンラインによる地上勤務(事務など)
・現地での短時間就業の支援など
・現地駐在員の前任者の奥様の持たれていたお仕事などの事例紹介
・企業間の連携、若しくは説明するための資料提供。
(国内&現地の法律、社内ルールの範囲内で、多少形態は変わったとしても就業は可能か否か等の説明)
・現地での就労機会の紹介
・就労ビザ取得に関する詳細情報
・育児をしながらでも働ける環境提供(時短や在宅の仕事紹介など)
・語学補助しかなく、そもそもどんな条件なら就労可能か、就労によって手当がどう変わるかの詳細説明がほしい。
・語学補助はあるが、就職には語学ではなくビザが問題だった。

(3)柔軟な補助内容 
・現地の大学講座に通うなどそうした機会があることを教えてくれたり、可能なら費用の補助をしてくれるとありがたい。
・語学学習の費用補助はありますが、一年限りだったりと現地での生活に対する補助の位置付け。補助の出し方を見直すべき
・ 外部企業等と提携した幅広いメニューがあって予算の範囲内で各自必要な内容を選択できる方が良い。
・帯同する配偶者のキャリアに関する費用は幅広く認めて補助してもらいたい。
・語学学習補助だけではなく資格取得補助や通信教育補助も提供してほしい。

(4)帯同前の説明、コンサルティング実施
・帯同前はまずキャリアコンサルティングを実施してもらい、帯同中の自発行動につなげたい
・キャリア継続を支援する姿勢が見えなかったので、そういったフォローがあるとよかった。
・現地にハローワークがあるわけではない&駐妻目線で支援できるキャリアコンサルタントがいるわけではないので、「家族手当を与えて終わり」ではなく、帯同者との面談、キャリア帯同者や駐妻専用キャリアコンサルタントとの仲介は最低限行ってほしい。
・駐在員、配偶者ともに受けられる、帯同前セミナーを開いて欲しい。
・帯同前のヒアリング

研究員 Sou 見解

・外資系企業の場合、駐在による共働世帯収入減少への補填、そして駐在員配偶者のキャリアを考慮し、ビザ支援、就職支援、自己啓発費用補助など様々な支援政策を行っていると言われている(EY調査レポートリンクより引用)

・一方、日本の企業において、帯同前に駐在員の配偶者に対して学習補助支援を提供している企業は3割近くあるものの、利用期間、費用上限付きのものとなっている。帯同配偶者への積極的な「キャリア支援」よりも現地生活適応に向けての「生活支援」との位置付けと捉えられる。

・駐在員雇用主での帯同配偶者の就労禁止規定、そして就労による不利な帯同条件への変更、消極的な就労情報提供に対して帯同配偶者が最も不満を抱えている。

・帯同配偶者へのキャリア支援として、より柔軟な補助形式も期待しつつ、駐在員雇用主側での配偶者現地就労禁止規定の見直し、帯同配偶者就労に伴う帯同条件の設定明確化、公平化を通して、配偶者の自律的キャリア形成を妨げる要素を取り除くことを期待する(就労許可)。

・帯同前に、駐在員配偶者の現地就労への支援として、最低現地就労条件(法律、ビザ、会社ルール)の説明、税理士の紹介などを行ってほしいと駐在員雇用主に期待する(就労情報提供)。

駐在員雇用主による配偶者へのサポート海外VS日本

(1)駐在員雇用主から提供可能なサポート内容:

サポート施策
自己開発・高等教育費用
・職業訓練費用
・セミナー参加費
・語学学習費用
・キャリア開発 
就労支援・企業間ネットワークキン
    EX.現地他企業への紹介
・就職活動支援
    EX.労働許可書支援、キャリアコンサルティング
   履歴書アドバイス
・自社内における雇用機会の提供  
・起業支援    
就労許可就労禁止規定の撤去;就労に伴う帯同条件の明確化、公平化
生活支援語学学習、引っ越し、保育園探し、交通手段等

※ 一部「DUAL-CAREER COUPLES –AN EVALUATION OF ON-ASSIGNMENT CAREER SUPPORT FOR EXPATRIATE SPOUSES」Doctoral Thesis ,2016より引用                                        

(2)駐在員雇用主による配偶者へのサポートレベル

表の背景色を変更する
日本 海外
自己開発 ×
就労支援 ×
就労許可 △※
生活支援

海外赴任で家族の就労、6割の企業が「希望あれば認可」(日本経済新聞)

冒頭で述べたように、駐在配属を成功させるには駐在員配偶者の帯同生活に対する満足度が大きく影響するとの調査があるにもかかわらず、今回の調査からわかるように9割の配偶者が駐在員雇用主からのキャリア支援制度に満足ではない。
上記のように、駐在員配偶者に対して様々なサポート施策が考えられることから、駐在員配偶者の満足度を上げるには日本企業が一般的に行っている生活支援のみならず、一歩進んで就労支援などキャリア形成へのサポートが求められている。
駐在員雇用主には時代に合わせた、配偶者への支援の在り方を検討してほしい。

調査概要

調査手法:WEBアンケート(無記名式)
回答者数:46名
調査実施日:2023年10月29日(日)〜11月12日(日)
調査対象者:海外駐在帯同予定、帯同中、帯同経験のある女性