【駐妻キャリア総研・研究結果報告】駐妻ゆえの”壁”「ビザ」「配偶者の会社・扶養範囲」「子供」を乗り越え、現地での就労を希望した駐妻の7割超が内定を獲得

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私自身、夫の海外駐在に帯同しようと決めてから、現地で就労したいと思い、日本に居ながら就職活動を始めましたが、身近にロールモデルを探すことも難しく、情報収集に壁を感じ、かなり手探り状態でした。結果、1年間の就職活動を経て、希望の就労を実現できる会社に出会うことができましたが、共働きが浸透するなか、駐妻の就職活動をもっと便利に、スムーズに進められるようにしたいと思い始めました。
そのような背景から、初回のアンケート調査は、駐妻の就職活動の実態を把握することを目的として実施しました。

調査結果概要

◆就職活動をした駐妻の7割超が、平均5ヶ月の就職活動を経て、内定承諾により現地での就労に成功している

  • 現地の日系企業に雇用(無期・有期は問わない)されて就労している人が最も多く、日系企業で就労している人のうち3割超は海外からフルリモートで勤務している
  • 現地の外資系企業で就労するには語学やそれまでのキャリア形成などで選択が難しい面がありそう

◆就職活動における”壁”は、「ビザ」「配偶者の会社・扶養範囲」「子供」

  • 駐妻ゆえに就労条件が複雑で、個々人が手探り状態で情報収集にあたっている
  • 就職活動において情報収集を目的に活用する手段が、「転職サイト」より「人脈(家族、知人、元同僚などからの情報収集)」が最も多いことや、就職活動の期間が平均約3ヶ月と言われる一般的な期間(※)より長めの傾向にあることから、信頼性の高い情報が属人的で入手しづらい傾向にある
  • 応募や選考を目的に活用する手段は、転職サイト・エージェントがもっとも多いが、駐妻から特に選ばれているサービスはない
  • 帯同時期や居住国・地域、家族の状況に応じて、必要な情報や就労先に求める情報が異なり、さらに、個人で収集できる事例が少ない

(※)令和2年転職者実態調査の概況(個3.転職について)|厚生労働省(PDF)

目次

調査結果① 駐妻の就労状況

Q.現地での就労形態は?(n=34, 単一回答)

  • 約7割超が、就職活動を内定承諾で終えている
  • 現地で就労している人の約75%は、雇用関係をもちながら就労している。
  • 「雇用関係あり」のうち、日系企業で就労しているのは約95%だった
  • 日系企業で就労している人の勤務形態は、約65%が現地就労、約35%が海外フルリモートだった

Q.現地で従事している業界や業種は?(n=25、単一回答)

  • 業種は「サービス」「IT・通信」「メーカー」で約5割だった。
  • 職種は「事務・管理」「企画・マーケティング」で約5割超だった。
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調査結果② 駐妻の就職活動状況

Q.就職活動の時期は?(n=24、単一回答)

  • 就職活動の開始時期は、転居後が約6割であり、約8割が駐在・帯同確定後に就職活動を始めている
  • 就職活動期間は、2ヶ月が最も多く約25%であり、平均すると約5ヶ月だった。
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Q.就職活動で活用した手段は?(n=24、複数回答)

  • 情報収集を目的に活用した手段は「人脈」が最も多く約30%、次いで「転職サイト」が約25%、「地元媒体」が約15%だった。
  • 応募・選考を目的に活用した手段は、「転職サイト」が約40%で最も多く、次いで「人脈」が35%、「駐在帯同者コミュニティ」が10%だった。
  • 駐妻から特に選ばれているサービスはなかった
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<人脈以外の具体的サービス名>
日本でも使うもの: リクナビ/ LinkedIn / Indeed/ Pasona / LIBZキャリア / Green / CODEAL / キャリアクロス
滞在先に特化したものReeracoen/ JAC / フリーペーパーや新聞にある職業紹介欄 /大学のキャリアサポート/ 駐妻キャリアネット / SUNNYPARK

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<人脈以外の具体的サービス名>
日本でも使うもの:リクナビ / キャリアクロス / Wantedly / LinkedIn / Indeed/ en転職 / Green / CODEAL / ママワークス / クラウドワークス
滞在先に特化したもの: MixB /Pasona NA/ Reeracoen/ ベイスポ(ベイエリアの日系情報サイト)/ 日系スーパーに置いてあったフリーペーパー / シンガポールお役立ちネット求人欄 / 駐妻キャリアネット / SUNNYPARK

調査結果③ 就職活動における”壁”

Q. 就職活動でぶつかった壁は?(n=40、自由記述)

  • アンケートの自由記述欄で収集した「就職活動における”壁”」について、傾向をつかむため、回答文章中の単語の出現頻度によりワードクラウドを作成した
  • 「就労」や「駐在」「就職活動」という設問に関するワードを除くと、「ビザ」「夫の会社・扶養範囲」「子供」が目立つ
  • さらに、上記項目における駐妻(夫)の就労条件が特殊であることから、ロールモデルや相談相手の不足からくる孤独感、情報収集のハードルの高さを挙げる声が多かった
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属性データ

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研究員 日名より

今回のアンケート調査で、就職活動の実体験をもつ方々から様々な経験を共有していただき、私自身、就職活動中に同じ境遇の方と話す機会がなかったので、初めて”仲間”に出会えた感覚があり、共感する点も多く、心強く感じました。約7割超もの駐妻が、就職活動により現地での就労を実現させていることがわかり、それに勇気づけられる方も多いと思います。一方で、その裏には、手探りで情報を集め、不安や孤独と戦いながら就労を実現させるという、覚悟と気合と要領が求められる状況だったこともわかりました。

私は、現地での就労を目的に就職活動を行い、就労先を見つけることができましたが、その進め方が良かったのか、再び同じ状況になった時により良い進め方ができるのか、わからないです。「応募書類にはどのように就労条件を記載すれば良いか」「面談や交渉時に相手先の企業に求めるべきことはどのように伝えれば良いか」など、未だに答えを見つけられていないことが沢山あります。自身で収集できる情報を頼りに「このような就労環境を整えてほしい」と要望を面接時に伝えていましたが、情報源がオフィシャルなものばかりではないので、説得力に欠けることがもどかしい点でした。

アンケートの回答にもありましたが、駐妻の就職活動は、自ら海外勤務を望んでいる人の就職活動とは異なり、「(大半の場合は)就労期間を限定している」「契約形態や労働時間など就労条件が特殊」という前提条件があるため、純粋に、自身の経歴やスキルで評価される就職活動とは進め方が違うと思います。今回のアンケート調査や自身の経験を踏まえると、「駐妻(夫)が、帯同中もやりがいをもって働くために、就職活動の過程で企業に伝えるべき内容」を整理・見える化し、その情報に希望者がリーチできるようにすること必要ではないかと、考えます。今後は、個別のインタビューも行い、「誰に、どのような働きかけをしていけば良いのか」という視点で深堀していきます。引き続き宜しくお願いいたします!

\noteで就職活動やキャリア観も含め、雑多に書いています/
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