【駐妻キャリア総研・研究結果報告】海外帯同を機に約半数が再雇用制度なしの退職を経験し、帯同中も就労できるケースは8%のみ。 雇用側から見ると、多くの人材の喪失に繋がっている。


  • 「駐妻キャリア総研」は、配偶者に帯同するにあたって、自分のキャリアに関し、どのような選択肢があり、実際にどのような選択をしたか、を明らかにするため、配偶者の海外勤務等に伴う人事制度の利用についてアンケート調査を実施しましたので、報告致します。(有効回答数:123件)
  • 調査対象:帯同前に就労していた方で  配偶者の海外勤務を経験したことのある方(渡航前でも退職、休職などご自身のプランが確定している方を含みます)

調査結果概要

  • 配偶者の海外勤務等に同行するために利用できる制度を持つ企業は約半数
  • 普及している制度は「退職者の再雇用制度」35.8%、「配偶者同行休業制度」22.8%
  • 配偶者の海外勤務等に同行するため、51.2%は再雇用の制度もなく退職している
  • 帯同先の海外から勤務するための制度があると回答した人は1名のみで、回答者が当該企業で初の取得であった

目次

使えた制度は、再雇用制度が36%

帯同にあたって、あなたの勤務先ではどのような制度が利用可能でしたか(複数選択可)。
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退職(再雇用制度なし)を選んだ人は過半数を超える

帯同にあたって、あなたの仕事に関して実際にどのような選択をされましたか。 >

駐妻キャリア総研 坂本より

  • 共働き世帯が7割を超えた現在、もちろん配偶者の海外転勤に際して、育児へ専念できるなど、帯同を前向きに捉える者も存在するが、今回のアンケートを通して、帯同する側の自分のキャリアの中断を残念に思う声が聞こえてきた。
  • 長期的な展望をもって仕事に取り組んできた者にとって、配偶者が駐在によってキャリアを築くことを応援したい一方、自身のキャリアに不安を覚える場合は多いのではないか。
  • アンケート結果を参考に帯同する側の状況として次の通りグループ分けをした。
  • 「泣く泣く退職グループ」自身の勤務先に帯同するために利用できる制度がなく、やむを得ず退職。派遣社員、契約社員やパート勤務を含む。(45%)
  • 「制度が使えてほっとグループ」制度を活用して、自分のキャリアは一時中断して帯同。育児休業を含む。(39%)
  • 「転勤ループグループ」自身の勤務先には帯同するための制度があるものの、連続した海外転勤や不明確な年数により、制度が活用できずに退職。(3%)
  • 「現地で就労パイオニアグループ」制度はなくとも勤務先と個別交渉による海外からのリモート勤務を認めてもらう、現地で転職活動するなどにより、帯同中も就労を継続。(8%)
  • その他、制度を活用せず、前向きな理由で退職を選択した場合などが5%程度あった。
  • 配偶者の海外転勤に直面した際、自身のキャリアに関する選択肢がない、少ないことは問題ではないか。
  • 各グループの状況や企業として対策すべき課題を図表に示す。

退職したくなかったが、泣く泣く退職グループが45%

寄せられたコメント(帯同にあたって実施したキャリア選択の理由)

1. 泣く泣く退職グループ

  • 契約社員のため、再雇用制度はなかった。
  • 休職制度などがなく、なくなく退職した。リモート勤務も国外居住では叶わず残念だ。
  • 利用できる休業制度なし、夫の会社でも現地就労が認められていないため。
  • 勤め先は何とか残れるように動こうとしてくれたが、時差があってこれまでのように勤務が難しい事や、ビザ的に問題ないのか不透明だったので諦めた。
  • 上司に制度制定を働きかけたが会社のフェーズとしてまだ余裕がなかったため叶わなかった。リモート勤務も取得できるビザの規定上NGであったため一旦退職。

2. 転勤ループグループ

  • 配偶者の海外勤務が2回目で、一回配偶者帯同休暇を使ってしまったので、2回目使えなかった。
  • 制度はあるが、勤続年数が足りず使えなかったため、退職。

3. 制度が使えてほっとグループ

  • 再就職制度があった為、念の為登録しておいた。
  • 待っていてもらえる場所があるならそれに越したことはないと思ったため。
  • 退職も考えたが、戻ってきてから改めて考えることでもいいと職場の上司のアドバイスがあったため、休職とした。
  • 夫の任期が2年以内であれば休職制度を使えたが、5年だったため一度退職し、再雇用制度を利用することにした。
  • 現地で就労したかったものの(休職中は就労不可)、会社を続けたかったため退職ではなく休職を選択した。
  • リモートワークでの継続が税務上認められなかったため、休職制度を利用中です。
  • 復帰のチャンスを残すために休業を選択したが、この場合は現地就労が認められないデメリットもあるため、退職&再雇用制度への切り替えも検討している。
  • 休業制度では現地就労が認められていないため、退職を選択した。

4. 現地で就労パイオニアグループ

  • 配偶者と同一の企業で就業していたため、制度としてはなかったが、配偶者の赴任地からリモートによる就業の規則を作ってもらった。
  • 制度としてはなかったが、フルリモートでの勤務を認めてもらった。
 

調査概要

  • 調査手法:WEBアンケート(無記名式)
  • 回答者数:123名
  • 調査実施日:2023年10月7日(土)〜10月21日(土)
  • 調査対象者:帯同前に就労していた方で 配偶者の海外勤務を経験したことのある方(渡航前でも退職、休職などご自身のプランが確定している方を含みます)